保守主義について気合を入れて学びたい人に
まず申し上げておきたいことは、本書は上下合わせて800ページ以上の大著だということです。(この私のように)生半可な気持ちで読み始めると途中で心が折れそうになりますが(^▽^;)、一方で苦労してでも読了する価値はある本だと思います。
本書は1950年代にアメリカで出版され、アメリカにおける保守主義のリバイバルのきっかけになったといわれています。保守主義の黎明期から現代(出版当時)までの歩みを、様々な思想家や政治背景の解説を交えて生き生きと描いており、著者の相当の知識量、読書量がうかがえます。読んでいると知的な刺激をビンビンと受ける好著です。
本書は冒頭で保守という考え方の基本的な定義を行い、その後時代を追ってエドマンド・バークやジョン・アダムズなどの代表的な保守の思想に触れていくという構成になっています。この冒頭の定義がよく整理されていて、何が保守主義で何が保守主義ではないのかがよくわかります。
また、本書は、個々の思想を解説する中で、全体主義や理性主義についての批判も展開しています。印象的だったのは、批判の矛先に自由主義も含まれているところです。しかも、左翼的な意味での(いわゆるリベラルと呼ばれる)自由主義だけではなく、J・S・ミル的な個人主義としての自由主義についてもやり玉に挙げられています。その鋭い指摘は原文を読んだ方が面白いと思いますので(私の頭では要約するのが大変なので)、ぜひ内容を本書で確認してみてください!
以前レビューした「保守主義とはなにか」は入門書として適していると思いますが、本書はある程度気合をいれて学びたい方に適していると思います。頑張って読み通せば、保守主義の基本的な考え方、歴史、それぞれの思想家の特徴などがよく把握できます。以後、個々の思想家の本にもスムーズに入れるのではないかと思います。
ただ、分量が多いうえに内容が多岐にわたるため、一度読んだだけでは消化しきれない内容もあるかもしれません。そういう意味でも、何度も読み返すべき本だと思いますし、そしてその価値のある名著と言っていいと思います。
保守主義の精神(上)
ラッセル・カーク
保守主義の精神(下)
ラッセル・カーク
夫
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