人文・思想 哲学

保守主義の精神(上・下):何度も繰り返して読みたい名著

投稿日:2018年12月11日

保守主義の精神(上)-ラッセル・カーク-idobon.com

保守主義について気合を入れて学びたい人に

まず申し上げておきたいことは、本書は上下合わせて800ページ以上の大著だということです。(この私のように)生半可な気持ちで読み始めると途中で心が折れそうになりますが(^▽^;)、一方で苦労してでも読了する価値はある本だと思います。

本書は1950年代にアメリカで出版され、アメリカにおける保守主義のリバイバルのきっかけになったといわれています。保守主義の黎明期から現代(出版当時)までの歩みを、様々な思想家や政治背景の解説を交えて生き生きと描いており、著者の相当の知識量、読書量がうかがえます。読んでいると知的な刺激をビンビンと受ける好著です。

本書は冒頭で保守という考え方の基本的な定義を行い、その後時代を追ってエドマンド・バークやジョン・アダムズなどの代表的な保守の思想に触れていくという構成になっています。この冒頭の定義がよく整理されていて、何が保守主義で何が保守主義ではないのかがよくわかります。

また、本書は、個々の思想を解説する中で、全体主義や理性主義についての批判も展開しています。印象的だったのは、批判の矛先に自由主義も含まれているところです。しかも、左翼的な意味での(いわゆるリベラルと呼ばれる)自由主義だけではなく、J・S・ミル的な個人主義としての自由主義についてもやり玉に挙げられています。その鋭い指摘は原文を読んだ方が面白いと思いますので(私の頭では要約するのが大変なので)、ぜひ内容を本書で確認してみてください!

以前レビューした「保守主義とはなにか」は入門書として適していると思いますが、本書はある程度気合をいれて学びたい方に適していると思います。頑張って読み通せば、保守主義の基本的な考え方、歴史、それぞれの思想家の特徴などがよく把握できます。以後、個々の思想家の本にもスムーズに入れるのではないかと思います。

ただ、分量が多いうえに内容が多岐にわたるため、一度読んだだけでは消化しきれない内容もあるかもしれません。そういう意味でも、何度も読み返すべき本だと思いますし、そしてその価値のある名著と言っていいと思います。


 

保守主義の精神(上)-ラッセル・カーク-idobon.com

保守主義の精神(上)
ラッセル・カーク

Amazonで見る 楽天で見る

 

保守主義の精神(下)-ラッセル・カーク-idobon.com

保守主義の精神(下)
ラッセル・カーク

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.
夫

国際関係、政治、哲学、古典に関する本が大好物。読書は絶対紙派(電子はちょっと苦手なのです…)。アコースティックギターが趣味で夜な夜な練習にいそしんでいる。ツンツンヘアがトレードマークで、ヘアカットをするときのお決まりの注文は「横と後ろはバリカンでトップは短く」。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-人文・思想, 哲学
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

大学時代しなければならない50のこと-中谷 彰宏-idobon.com

大学時代しなければならない50のこと:大学時代を全力で有効活用するために

文字通りに受け取る必要はないけれど… 「○○時代にしなければならない●●のこと」という本はたくさん出ており、私はあまりこういう類の本は読まないのですが、例外的に本書は私が大学生時代(もう10年以上も前 …

読書論 (岩波新書) -小泉信三-idobon.com

読書論 (岩波新書) :何度も読み返したくなる、味わい深い読書論の古典

参考になるアドバイスも満載 私が読書に目覚めたのは20歳くらいなのですが(遅いですね💦)、その際に、どういう本を、どうやって読んだらいいんだろうか?という疑問にまず遭遇しました。そこで …

キリスト教と戦争 (中公新書)-石川 明人-idobon.com

キリスト教と戦争:キリスト教はいかに戦争をとらえてきたかがわかる好著

キリスト教は戦争を肯定しているのか、平和主義なのか 私自身クリスチャンであり、また、国際政治や安全保障に興味があります。そんな私の大好きなトピックが合体した、私にとっては1冊で2度おいしい(?)本です …

知性の磨き方-林望-idobon.com

知性の磨き方:辛口かつユーモアあふれる論調で語る知性磨き

学問に、読書に、趣味に、あらゆる人に参考になる人生論 私のレビューをいくつか読んでいただいたことのある人はお気づきかもしれませんが(そんな方がどれだけいらっしゃるかはわかりませんが…(^^ …

自分の時間:時間は実に不思議な貴重品である アーノルド・ベネット

自分の時間:限られた時間で自分を高める方法

すぐ読める、すぐ役立つ、それでいて味わい深い 仕事がおわり、へとへとになって帰宅したのち、テレビやネットをぼんやり眺め、お酒の1杯でもいただいて、明日も早いからと布団にもぐりこむ。特段不満があるわけで …