読むと勉強したい気持ちが湧いてくる
著者である平松茂雄氏は、多くの中国の軍事関係の専門書を出されていますが、本書は一般向けに書かれており、専門知識がなくてもストレスなく読むことができます。
本書は、著者の中国政治・軍事論のエッセンスをまとめた部分と、研究方法を紹介している部分の大きく二つに分けられます。中国の軍事及び政治についての知見を深められる専門書として読むことができるうえ、著者の研究論やちょっとした自伝などがまとめられており、啓発書としても読むことができるという、一冊で二度おいしい本になっています。
彼の毛沢東に対する高評価(もちろん人物としてではなく、あくまでも彼の戦略についての評価ですが…)に関する部分なども、読んでいてとても刺激的ですが、本書で特に興味を惹かれたのが、彼の研究論です。これまで多くの中国関係の専門書を出版してきた平松氏の研究方法の基本が、人民日報(中国政府の公式新聞)と解放軍報(中国軍の公式新聞)の二紙を徹底的に読み込むという、単純明快なものであることです。著者曰く、個別の論文などを書く際はもちろんいろんな資料を参照するそうですが、研究の基本は、あまり余計な情報は読まず、この二紙を徹底的に読み込むことだ、と力強く主張しています。
確かに、中国研究に限らず、学術研究一般において、一次資料の重要性は疑う余地のないものですが、昨今の大量に出版される解説書や一般書の洪水の中で、基本としての一次資料の大切さを改めて実感させてくれます。「誰かがそう言っていた」ではなく、「自分の目で確かめ、考える」という著者の態度は、個人的にも自分への戒めとして見習いたいです。
また、本書を通じて、著者の研究に対する真摯な態度が随所で伺われ、読むこちらの背筋が正される思いがします。単なる中国論にとどまらない、何度も読み返したくなる、そんな魅力が本書にあります。
実践・私の中国分析―「毛沢東」と「核」で読み解く国家戦略
平松茂雄
夫
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