外交・国際関係 社会・政治

Strategic Asia 2017-18: Power, Ideas, and Military Strategy in the Asia-Pacific:東アジアの安全保障の全体像がつかめる1冊!

投稿日:

Strategic Asia 2017-18 Power, Ideas, and Military Strategy in the Asia-Pacific-Ashley J. Tellis-idobon.com

専門書だけど割と楽しく読めてしまう

本書は、アメリカのNational Bureau of Asian Research という、アメリカにおけるアジア研究の重鎮ともいえるシンクタンクが、毎年12月に出している「Strategic Asia」というシリーズの最新作です。本シリーズは、米国大学院の東アジアに関する授業ではよく必読文献として出されており、米国における東アジア研究の基本文献の一つという位置づけになっている感があります。そういう意味で本シリーズは、東アジア安全保障についての知識が得られるだけでなく、米国の東アジアに関する一般的な視点を学べるという点でも有益だと思います。過去には、中国の軍事戦略、東アジアにおける核拡散の可能性、東アジアにおける「国力」についての考察など、様々な側面から東アジアの安全保障を分析しています。

さて、前置きがやたら長くなってしまい恐縮ですが(^^;)、本書はそんな「Strategic Asia」シリーズの最新作で、東アジアの主要国の軍事戦略を解説しています。中国、ロシア、日本、韓国、インド、インドネシア、そして米国について、それぞれの軍事戦略の概略がその分野の専門家によって論じられています。

この分野について予備知識があまりなくても、

・各国のおかれている現状がどのようなものか

・その現状に対して現在どのような戦略をとっており

・将来的にどのような戦略をとっていくのか

ということがわかりやすく解説されているため、理解するのは難しくないと思います。
本書を読み終えれば、東アジアの軍事的な側面について、幅広く、そして深い知識が得られる得られるのではないかと思います。

本書を読んで私が特に「なるほど!」と思ったのは、ロシアの軍事戦略についてでした。ロシアは近年では特にヨーロッパや米国を敵視した政策をとっており、今月(3月)にプーチン大統領が行った年次教書演説でも、ヨーロッパや米国などを対抗するためとみられる新兵器を多く発表しました。一方で、ロシアは中国に対しては蜜月関係を続けており、特段の脅威とみなしている向きはあまり感じられません。一見すると、中国は人口も多く、国境も広くロシアと隣接しており、また歴史的に見てもむしろロシアと仲の良かった時期のほうが珍しいため、ロシアが中国よりも西側諸国(古い?)を敵視している政策にちょっと疑問を持っておりました。

本書は私のそんな疑問点をすっきりと解消してくれました。一言で言うと、「中国からの脅威は物理的なもの(人口の多さ、強大な軍事力)であり、ロシアの政治体制を脅かす性質ではないが、西側諸国の脅威は価値観(民主主義など)にかかわるものであり、ロシアの政治体制を直接脅かす性質である」から、と指摘しています。このほかにもいろいろな知見がちりばめられており、専門書の割には楽しんで読み進めることができます。

東アジアに安全保障に興味のある方には、自信をもっておススメできるクオリティだと思います。難点は、日本での入手がやや難しいことです。日本のアマゾンでもまだ本書は見当たらず、さしあたり米国のAmazon等で入手する必要がありますが、そのような手間暇(&送料)をかけても入手する価値はアリだと思います。


 

Strategic Asia 2017-18 Power, Ideas, and Military Strategy in the Asia-Pacific-Ashley J. Tellis-idobon.com

Strategic Asia 2017-18: Power, Ideas, and Military Strategy in the Asia-Pacific
Ashley J. Tellis (著者兼編集)、Oriana Skylar Mastro (著者)、Mark N. Katz (著者)、他

Amazon.comで見る

 

 

The following two tabs change content below.
夫

国際関係、政治、哲学、古典に関する本が大好物。読書は絶対紙派(電子はちょっと苦手なのです…)。アコースティックギターが趣味で夜な夜な練習にいそしんでいる。ツンツンヘアがトレードマークで、ヘアカットをするときのお決まりの注文は「横と後ろはバリカンでトップは短く」。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-外交・国際関係, 社会・政治


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

実践・私の中国分析―「毛沢東」と「核」で読み解く国家戦略-平松茂雄-idobon.com

実践・私の中国分析―「毛沢東」と「核」で読み解く国家戦略:中国の政治・軍 事に興味のある方は必読の研究論

読むと勉強したい気持ちが湧いてくる 著者である平松茂雄氏は、多くの中国の軍事関係の専門書を出されていますが、本書は一般向けに書かれており、専門知識がなくてもストレスなく読むことができます。 本書は、著 …

ミサイルの科学-かの よしのり-idobon.com

ミサイルの科学:よくわかるミサイル入門書

北朝鮮のニュースを理解するためにもおススメです 北朝鮮は、昨年11月に新型の大陸間弾道弾(ICBM)級弾道ミサイル(火星15型)を発射しました。その前の昨年8月と9月には、日本列島を飛び越える形で2発 …

分断されるアメリカ-サミュエル ハンチントン-idobon.com

分断されるアメリカ:アメリカの「分断」についての考えをひっくり返してくれる刺激的な書!

アメリカの「分断」についての考えをひっくり返してくれる刺激的な書!:分断されるアメリカ 昨年、トランプ大統領が就任する前後で文庫版で復刊され(最初の翻訳出版は2004年)、話題となった本書。著者は、『 …

戦う北欧:抗戦か・中立か・抵抗か・服従か-武田龍夫-idobon.com

戦う北欧 抗戦か・中立か・抵抗か・服従か:類書なき良書

軍事力なしには平和も中立も守りえなかった悲壮の歴史 絶版して久しい本書ですが、読んであまりにも面白かったので、レビューさせていただきます!(アマゾンで簡単に中古本を購入できますしね♫ 良い時代です) …

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる-原書房編集部 (翻訳)-idobon.com

民間防衛ーあらゆる危険から身を守る:ハウツー本にとどまらない奥深さ

スイス政府の気概に感服 本書は冷戦時代、スイス政府が全国の各家庭に1冊ずつ配られたとされる本です。戦争が起こったときのために平素からいかに備えるか、そしていざ戦争が起こった時にいかに対応するか、といっ …