スイス政府の気概に感服
本書は冷戦時代、スイス政府が全国の各家庭に1冊ずつ配られたとされる本です。戦争が起こったときのために平素からいかに備えるか、そしていざ戦争が起こった時にいかに対応するか、といったことが書かれています。これを全家庭に配布するというのがすごいですね。。。(・□・;)
本書は日本語訳の副題にもあるように、あらゆる危険から身を守るということで、内容は多岐にわたります。平素から備蓄すべき物資、傷病者の運び方、核・生物・化学兵器へ対処法から、敵国のプロパガンダに踊らされないような心理防衛策に至るまで、図などを使いながらわかりやすく解説しています。
これだけでも日本の書籍ではなかなか見られない貴重な内容ですが、さらに特筆すべきは、そうしたハウツーを超え、平和と戦争に対する冷徹なまでの哲学が論じられていることです。例えば以下のようなものです。
「平和と自由は、一度それが確保されたからといって、永遠に続くものではない」(p.25)
「「わが国では決して戦争はない」と断定するのは軽率であり、結果的には大変な災難をもたらしかねないことになってしまう」(同上)
「われわれは、あらゆる事態の発生に対して準備せざるを得ないというのが、最も単純な現実なのである」(p.12)
日本政府がこういう内容の本を税金使って全家庭に配布しようものなら、大変なことになりそうな気がします(笑) 改めてスイス政府の気概を感じざるを得ません。
つまり本書は、戦争などに備え、対応するためのハウツー本としての側面と、国際情勢に対する哲学を論じる啓蒙書としての側面を併せ持っています。自らの国際情勢観を養う参考にもなりますし、ここで論じられているハウツーは、地震などの災害時にも応用できるのではないかと思います。
スイス政府が冷戦時代に発行した本ですが、現在の日本ではなお有用であると思います。戦争から命を守るとはどういうことかを考えるための、まさに必読書と言ってもいいかもしれません。
民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる
原書房編集部 (翻訳)
夫
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