外交・国際関係 社会・政治

The Hundred-Year Marathon(邦題:China 2049): 日本にとって本当の脅威は何かを教えてくれる本

投稿日:2018年6月21日

The Hundred-Year Marathon: China's Secret Strategy to Replace America As the Global Superpower Michael Pillsbury-idobon.com

北朝鮮よりも恐ろしい中国

中国という国は本当に恐ろしい…というのが、率直な読後感でした。いえ、別に中国の人が個人的に恐ろしいというわけではないのですが(^^;)、国家としてのビジョンの大きさ、そして、世界の覇権を虎視眈々と狙う中国の周到さには、空恐ろしいものを感じました。

著者であるマイケル・ピルズベリー氏は中国の研究者であると同時に、米国政府で長く働いた経験もある実務家であり、実務・学問両面から、中国を熟知している専門家と言えそうです。そんな彼は中国の目標は、建国100年後(2049年)までに世界の覇権をとることであり、その目標に今現在も粛々と邁進している、というかなりショッキングな主張をしています。

このような主張は、ともすると陰謀論のようにも聞こえますが、そこはさすが専門家。歴史、文化、最近の出版物、及び中国政府高官のスピーチやインタビューなど様々な根拠を示しつつ、非常に説得力のある議論を展開しています。

過去はソ連、現在は米国を利用しつつ経済力、軍事力を蓄え、真の狙い(世界の覇権を握ること)は決してあからさまにはせず、着々と自らの目標を遂行していくその中国の様は、なんと中国は国家戦略がしっかりしていることかと、読んでいて感嘆させられるほどです。もちろん、その中国の戦略は、現在の日本や米国など多くの国が基礎としている、法の支配に基づく世界秩序とは相反するものであり、感嘆している場合ではないのですが。。。(´・ω・`) (中国が覇権を握った後の世界の様子については、ぜひ本書をご覧ください!)

最後に、筆者は米国に対し、このような中国の戦略に対抗するための様々な措置を提案していますが、その大前提となるのは、まず、中国がそのような戦略を抱いているということをしっかりと認識することだ、と強調しています。確かに、敵(という表現が適切かは置いておきまして)に対処するには、まず敵をよく知ることだ、と古いことわざにもありますね。

日本も、まずは中国の戦略のことをもっと知る必要がある気がします。最近ではどうしても北朝鮮情勢に目が向きがちですが(私もそうです)、中長期的な課題として、中国にいかに対処するかということは、避けられない問題だと思います。本書は、そんな中国の戦略を深く知るための素晴らしい手引きとなると思います。


 

The Hundred-Year Marathon: China's Secret Strategy to Replace America As the Global Superpower Michael Pillsbury-idobon.com

The Hundred-Year Marathon: China’s Secret Strategy to Replace America As the Global Superpower
Michael Pillsbury

Amazonで見る 楽天で見る  

The following two tabs change content below.

国際関係、政治、哲学、古典に関する本が大好物。読書は絶対紙派(電子はちょっと苦手なのです…)。アコースティックギターが趣味で夜な夜な練習にいそしんでいる。ツンツンヘアがトレードマークで、ヘアカットをするときのお決まりの注文は「横と後ろはバリカンでトップは短く」。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-外交・国際関係, 社会・政治
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

名著で学ぶ戦争論-石津 朋之-idobon.com

名著で学ぶ戦争論:気軽に読める戦争論入門

ワクワクさせてくれる格好の入門書 その名のとおり、戦争や安全保障に関する名著を紹介する本ですが、セレクションが古今東西そろっていて、勉強になります(*^^*) 昔はトゥキディデスの『戦史』や『孫子』、 …

In Defence of War-Nigel Biggar-idobon.com

In Defence of War:キリスト教神学者が書いた戦争論の傑作

戦争と平和主義を考えるうえで最高の専門書 色々と本を読んでいて、震えるほど知的興奮に満たされる本に出会えるのは、私の場合せいぜい年に1~2冊くらいです。しかし、2019年は初っ端からきました!今年はい …

嘘つきアーニャの真っ赤な真実-米原万里-idobon.com

嘘つきアーニャの真っ赤な真実:知らなかった東欧・中央の共産主義世界が読み取れる

少女時代をプラハのソビエト学校で過ごした米原万里さんの回想録 共産党員の娘としてうまれた米原万里さんは、父の仕事の関係で9歳~14歳プラハで過ごし、現地学校ではなくソビエト学校に通われます。この本は、 …

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる-原書房編集部 (翻訳)-idobon.com

民間防衛ーあらゆる危険から身を守る:ハウツー本にとどまらない奥深さ

スイス政府の気概に感服 本書は冷戦時代、スイス政府が全国の各家庭に1冊ずつ配られたとされる本です。戦争が起こったときのために平素からいかに備えるか、そしていざ戦争が起こった時にいかに対応するか、といっ …

核兵器の仕組み:核兵器や原子力発電の仕組みが面白いほどわかる

文系でも読める核兵器の構造に関する入門書 白状します。私、極めて典型的な文系人間です。 大学は考古学を勉強し、大学院では国際関係学を専攻したので、大学受験以降、数学や理科などの科目とは無縁な生活を送っ …