アカデミックな就職活動のサバイバル教本
本書は、アメリカの博士課程の学生が就職で直面する厳しい現実と、その中でいかにアカデミックな職をゲットするかという方法に焦点をあてて解説している本です。
米国においても、博士課程の学生の就職状況は年々厳しくなっているようです。博士号をとっても、何年も安月給の非常勤講師を勤めた挙句、結局常勤の仕事が見つからず、民間企業などでの仕事を探さざるを得ない、というケースも多いと聞きます。
筆者は、そういう厳しい現実を踏まえ、あえてアカデミックな世界に踏み込まないのも賢い選択だと率直に述べています。そのうえで、それでも学問で食べていく!という決意の固い人は全力で応援しよう、というスタンスです。このフランクな態度に好感が持てます。
本書の素晴らしいところは、まずアドバイスが網羅的であることです。博士課程の1年目の過ごし方から、コンフェレンスに参加する際の注意事項、アドバイザーとの適切な付き合い方、さらには面接の時の服装まで、とにかくこれ1冊あればひととおりアカデミックな就職活動に必要な知識は全部揃う構成になっています。
さらに、本書の優れたもう一つの点は、アドバイスが極めて具体的であることです。CV(レジュメ)の模範的な構成から研究助成金を申し込む際のカバーレターの書き方まで、すぐ使えそうなアドバイスが満載です。
日本では、例えば吉原真里氏の『アメリカの大学院で成功する方法』(中公新書)に、就職活動に関するアドバイスも若干記載されています。しかし、吉原氏の本は、大学院受験の仕方や大学院でのコースワークを生き残る方法など、大学院での生活に重きをおかれているのに対し、本書は就職活動という1点にテーマが絞られていますので、アカデミックな就活、特に国外での研究職を目指している方には、断然本書がおススメです。
私はアカデミックな就職活動をしたことがないので、身をもってその有用性を判断できる立場にはありませんが、これからアカデミックな世界で戦っていこうという方には心強い味方となる本だと思います。
The Professor Is In: The Essential Guide to Turning Your PH.D. Into A Job
Karen Kelsky
夫
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