軍事力なしには平和も中立も守りえなかった悲壮の歴史
絶版して久しい本書ですが、読んであまりにも面白かったので、レビューさせていただきます!(アマゾンで簡単に中古本を購入できますしね♫ 良い時代です)
本書は第2次世界大戦期に、ソ連やドイツの圧倒的な侵攻によって苦境に立たされた、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマークの歴史が簡潔にまとめられています。
第2次世界大戦について書かれた本は多いですが、こうした北欧の国々に焦点を当てて書かれた本は少ないのではないでしょうか。本書は(当時の)現役の外交官によって書かれ、専門的な資料も多く使われています。しかし、著者本人もあとがきで書いているように、一般の読者を想定して書かれており、予備知識等があまりなくてもすらすらと読めてしまいます。
北欧4か国の苦難の歴史を読んで一番印象に残ったことは、軍事力が貧弱な国家は、大国の前には平和も中立も保てない、という冷徹な事実のような気がします。これら4か国は、みな平和を願い、ドイツやソ連の戦争には関わりたくないと考えていました。しかし、ソ連やドイツは、それぞれの戦略のために、これら4か国を占領したり、強制的に相互援助条約を結ばせたりして、それぞれの戦争計画に取り込んでいきました。結果として、フィンランドやデンマークのような国々は、それぞれソ連やドイツの半ば一員として、戦争に巻き込まれていくのです。
同じようなことが、今後の日本にも言えるかもしれない、と感じずにはいれません。平和憲法を重んじ、極端な例では日米同盟や自衛隊を解消して非武装中立を、という意見もあります。それはそれとして一つの考え方だと思いますが、結局、軍備を持たない(もしくは弱い)国は、いざというときには大国の勢力圏に取り込まれてしまうのではないか。望まない戦争に巻き込まれてしまうのではないか、という疑問がどうしても残ります。北欧4カ国の歴史は、平和や中立を守るためには、そのための犠牲と覚悟が必要である、ということを示唆しているように思えてなりません。あくまで私の解釈ですが(^^;)
私が生まれる前(昭和56年)に出版された、結構古い本ですが、今読んでも知的な刺激が満載の本です。北欧の歴史や日本の防衛・安全保障に興味のある方にはぜひおススメしたい1冊です。
戦う北欧:抗戦か・中立か・抵抗か・服従か
武田龍夫
夫
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