手軽に読めてわかりやすいプロテスタンティズム入門書
ルターの宗教改革というのは、小・中学校の授業でも習うメジャーな出来事ですが、本書はそのあまり知られていない側面や、現代の政治に与える影響などを解説しており、知的な刺激満載の本でした。
個人的には、教改革というと罪を許されるという「免罪符」を販売していた当時のカトリック教会を批判し、「95か条の提題」を示し、プロテスタントという宗派を始めた、というのが大体頭に上る内容でした。
しかし本書を読むと、そのようなステレオタイプの認識からはずいぶん異なる内容が書いてあります。
個人的にヒットしたところをあげますと、
- ルターはプロテスタントという新しい宗派を始めようとしたわけではなく、あくまでカトリックのリフォームを目指していたこと
- ルター派の人々は自身を「福音派」と呼称していたかかわらず、カトリック側からの呼び名である「プロテスタント(抵抗するもの)」が定着した。(その理由はぜひ本書をご覧ください(笑))
- プロテスタントにはさまざまな宗派があるが、大きく分ければ、国家権力や既存の伝統等と結びつきの強い、保守主義的な「古プロテスタンティズム」(ルター派、長老派など)と、それらを批判的なリベラルな「新プロテスタンティズム」(バプテスト、ペンテコステなど)に分けられること
などでしょうか。また、ルターがヒトラーによって政治利用されていた、というくだりも興味深かったですね。
ただ、日本ではカトリックもプロテスタントも数が少なく、国家とのつながりも薄いので、筆者のいう保守・リベラルの区別はあまりないような気がします。
私自身、プロテスタントのクリスチャンで、長老派の教会に通っています。なので、本書の分類ですと保守的な「古プロテスタンティズム」に入るのでしょうが、あまり保守的な雰囲気はしません。主観ですが(;^ω^)
なお、本書に何度か言及されている、マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」も読みたくなりますね。
まとめますと、プロテスタントについて知らなかった側面や、興味深いエピソードが色々と載っており、最後まで飽きずに読むことができますので、手に取ってみて損はない本だと思います。
プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで
深井 智朗
夫
最新記事 by 夫 (全て見る)
- Naked Economics(経済学をまる裸にする):すべての経済オンチに贈る最高の入門書 - 2022年11月2日
- 平和主義とは何か:平和主義とは何か:冷静に平和主義を考えるために - 2020年2月14日
- 自分の時間:限られた時間で自分を高める方法 - 2020年2月7日