あなたは、自分の常識を疑う勇気はありますか・・・?
タイトルからしてかなりヤバげな本ですね(^^;) 副題にある通り「人権」「平等」など、一般的に望ましいとされている概念を「毒」とまで呼び、本文ではデカルト、ルソー、ヘーゲルなどの有名な哲学者や、「近代人権思想の始まり」などと言われるフランス革命を激越に批判しています。さらに、「進化論」で有名なダーウィンまで批判し、もうやりたい放題です(笑) ここまで書くととても危ない本に聞こえますが、じつは決してカルトなどの類の本ではなく、れっきとした大学教授が書いた、近代政治哲学の本です。
本書は、「保守主義」(日本で言われる「保守」とは若干意味合いが違うようです)の哲学の立場から、共産主義及びそれに類する思想を批判しています。しかし、その批判の矛先が、私たちが普通良いものと思っているものも容赦なく含まれているものだから、読んだ時の衝撃は非常に大きいです。しかも、大学教授らしくきちんと根拠を示して論を展開しているので、主張にはかなりの説得力があり、ますますその衝撃は大きくなります。
以前、「知的生活の方法」という本のレビューで、人生を変えられたと呼べる本は私にとって数冊しかありません、書きましたが、本書はまさにそのうちの1冊です。著者の主張に全て賛成する、というわけではないですが、今までの既成概念を大幅にひっくり返されるので、非常に知的好奇心が刺激されます。自分が当たり前だと思っていたことが、実は違うのではないか、と考えさせられ、自分で調べてみたい、確かめてみたい、もっと勉強したいと思わされるのです。そして関連する本を手に取り、また別の本を読み…ということを繰り返しているうちに、気が付けば読書が習慣になっていました。それまであまり読書はしてこなかったのですが、以来、完全に読書がライフワークとなっています。本書に関する分野の本だけを読んでいるわけではありませんが、本書で受けた知的な刺激が一つのきっかけだったことは間違いありません。
本書の読後感は、たとえて言えば、映画「マトリックス」で、主人公が仮想の夢世界であるマトリックスから現実の世界に目覚める感覚に似ているのかもしれません。それくらい、衝撃的な内容が書いてあります。政治、哲学系に興味のある方はぜひ一読をおすすめします。もちろん、著者の主張に賛成するかしないかはあなた次第。あなたは、自分の常識を疑う勇気はありますか・・・?
正統の哲学 異端の思想―「人権」「平等」「民主」の禍毒
中川八洋

夫

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