現役の外交官が描いた、わかりやすいチャーチル解説本
日本で2018年3月末から公開されている映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」は、チャーチルが首相に選ばれて、これから首相として戦争を指導していく、そのごく最初の部分が描かれています。時は第2次世界大戦中、ヒトラーがフランス、オランダ、ベルギーなどに猛攻を加え、西ヨーロッパ戦線は既に壊滅状態。アメリカも中立を貫いており、孤立したイギリスに残された道は、徹底抗戦をするか、和平を乞うか。チャーチルは究極の選択を迫られる。。。
。。。と、本サイトは映画のレビューサイトではないのでここまでにしておきますが(笑)、本書「危機の指導者チャーチル」は、チャーチルの戦争指導者としての資質及びそのバックグラウンドに焦点を絞って解説した本です。もちろん、チャーチルの青年時代の話や、家族との関係など、第2次大戦期以外の話についても言及されていますが(中には映画を見ると、あ!これ本書に載ってたセリフだ!なんてシーンも多くあります。)、あくまでそれらは、チャーチルの戦争指導者としての資質にどう影響したか、という観点で描かれています。
このようにテーマが全体を通じてしっかりとしていますので、読んでいてとても頭に入り安いです。また、現役の外交官である筆者ならではの見解や解説も随所にちりばめられており、勉強になります。特に、映画のクライマックスで取り上げられていた、徹底抗戦か和平かをめぐるチャーチルと外相ハリファックスとの激論について、冷静に当時の状況を考えたうえで、双方の主張を吟味しているところは、一読に値すると思います。歴史的には、チャーチルの主張したとおりイギリスは徹底抗戦をすることになりますが、あの時、どうすることが正しかったのか。翻って、もし日本が今後同じような状況に立たされた場合、日本はいったいどのような判断を下すべきなのか、などについて、深く考えさせられます。
映画の予習として読んでもよいですし、映画を見た後、もっと深くチャーチルについて知りたい!という方にもうってつけだと思います。もちろん、映画とは関係なしに読んでも十分に楽しく、また、勉強になる本です。
チャーチルの解説本は日本語でも数多く出ており、私もそのうちの何冊かを読みましたが、そのなかでも本書はわかりやすさ、内容の深さなどの点でイチオシです!
危機の指導者チャーチル
冨田 浩司
夫
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