多読教材としてもグッド
トム・クランシーは言わずと知れた大物作家ですが、彼の世界観を引き継いで、著者のグリーニーが新たなジャック・ライアン伝説を紡いでいます。本家と比べても遜色なく、クランシーのファンなら、違和感なく楽しめる作品ではないでしょうか?
本書は2015年に出版されたものですが、現在の米朝の緊張した関係を踏まえれば、特に今読んで面白い作品だと思います。
本書の北朝鮮も、現実の北朝鮮も、国際社会の制裁によって資金が集まらず、核・ミサイル開発が思うように進んでいない。その状況を打開する手段として、本書の北朝鮮はレアアース輸出によって外貨を稼ぐために奔走し、現在の北朝鮮は、公海上で石油等を秘密裏に取引するいわゆる「瀬どり」によって、制裁逃れを図っている。最終目標は、本書でも現実でも、米国を攻撃できる核兵器搭載のICBM(大陸間弾道弾)の保有。そしてその行き着く先は。。。
現実の米朝関係を照らし合わせながら読むことによって、妙なリアリティが感じられ、ただのフィクションとして以上に楽しむことができると思います。また、北朝鮮高官の、「将軍様」(金正恩?)の無茶ぶりに辟易しながらも、粛清を恐れて奔走する様は、読んでいてこちらがかわいそうになるくらいです。。。
英語がわかりやすいうえに、普段聞きなれない、政府関係者同士の会話も多く展開され、言い回しもウィットに富んでいるため、一味違った、かつ使えればカッコいいビジネス(?)英語を学ぶことができます。とはいえ、それほど難しい表現は使われていませんので、英語を勉強中の方は、多読の教材としても使えるのではないかと思います。(なお、邦訳は「米朝開戦」新潮文庫)
ストーリーはもちろん、本家クランシー小説と同じく、読み始めたら止まらなくなる類の、ハラハラドキドキ満載の本です。色々と勉強になるうえに、ストレスフリーで読める、イチオシの小説です!
Tom Clancy’s Full Force and Effect
Mark Greaney
【日本語版はこちら】
米朝開戦(1) トム・クランシー(新潮文庫)
マーク・グリーニー
夫
最新記事 by 夫 (全て見る)
- Naked Economics(経済学をまる裸にする):すべての経済オンチに贈る最高の入門書 - 2022年11月2日
- 平和主義とは何か:平和主義とは何か:冷静に平和主義を考えるために - 2020年2月14日
- 自分の時間:限られた時間で自分を高める方法 - 2020年2月7日