サクッと読める健康入門書
よく健康に興味を持ち始めると、「塩分を減らしてがんを治す!」とか「腰を回せば病気知らず!」のような、タイトルだけは激しいのに内容は薄っぺらい本が目につきますよね。
著者オーガスト氏は栄養科学博士で、日本人とアメリカ人のハーフ。アメリカで栄養科学を学ばれただけあって、よくある日本の健康本とは違い、本書は非常に全うな内容です。
私も健康ブログを書いていて、海外のリサーチ文献や医師が書いたブログなどをよく参考にしますが、日本の健康常識は世界にかなり遅れを取っていると感じます。例えばゆるぎない大豆イソフラボン信仰があったり、「砂糖不使用!」と書いてあるのに人工甘味料を大量に使っていたりなどなど…。
本書は良い意味で日本人の健康に対する固定観念を壊してくれる一冊。「健康に気を付けたいけど何から始めていいかわからない」という人にオススメしたいです。
また、オーガスト氏は50代とは思えないくらいお肌ツルピカのイケメンなので、「老けない」と言うのにも説得力があります。
血糖値とインスリンの基本的な考え方もサクっと読めるし、パンとコーヒーだけの朝食がなぜだめなのかとか、健康に良いと思ってやっているコトが実は逆効果になっている理由なども、分かりやすく説明されています。
例えば健康に気を付けようと思うと、グリーンスムージー、野菜ジュース、乳製品、豆乳などの大豆製品、酵素ドリンクなどに目が行きますよね。こういったいわゆる健康食品をオーガスト氏はこてんぱんに否定しています(笑)。筋トレ推進派であるところもナイスです。
また、日本でまだあまり一般的には知られていない、果糖の摂りすぎによる害についてもしっかり書かれています。スティーブ・ジョブズは社名に「アップル」と付けるほどの果物好きで、「フルータリアン」と称して果物中心の食生活を送っていましたが、彼が発症していたガンは膵臓がんであったことは、彼の偉業以上に語られることはないかもしれません。ヘルシーなイメージのある果糖は、実は摂りすぎると膵臓に負担をかけ、砂糖以上に脂肪蓄積や老化促進の元になります。果物だけが原因とはかぎりませんが、ジョブズの食生活は膵臓がんに影響した大きな原因の一つと考えられます。
健康本を読む上で気を付けたいところ
一方で、反論したくなるような内容もありました。
例えば、卵は一日2~3個食べることが推奨されていますが、これが卵アレルギーの発症の原因となることもありますし、卵に遅延性アレルギーがある人にとっては致命的なアドバイスになってしまいます。
また、ドライフルーツ、メープルシロップ、蜂蜜もNGとしていますが、これも個人の状態と目指しているものによると思います。私は一日大匙1~2杯程度なら害はないと思っています。
これは全ての健康本に言えることですが、あらゆる人の背景を加味して本を書いていたら、めちゃくちゃ分厚い専門書になってしまいます。その時点で「サクっと知りたい」という入門書の役目を果たせなくなってしまうし、一部のオタク(私のような)にしかウケない売れない本になってしまいます。なのである程度ひとまとめにして主張することは間違いではないのですが、健康本を読む私たちが「すべてをまるまる鵜呑みにしない」という姿勢で読むことも大切だと思います。みんな遺伝子や環境や年齢も違いますから、一人の人にとっての正解が、別の人には不正解だったりするものです。
また、健康本を選ぶ上で、著者がちゃんと英語が読めるかも大事な鍵です。最新のリサーチ文献は大概英語で書かれているし、日本語では圧倒的に情報が少なすぎます。日本語化されるのを待っていたら、知識に遅れを取ってしまいます。
その点では、本書は問題なくオススメできる本です。
老けない人はやめている
オーガスト・ハーゲスハイマー
妻
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