「世の中で偉業を成し遂げる人々」の性質と傾向からインスピレーションを受けられる良書
生まれ持った才能や非凡な能力を過信する父親に「おまえは天才じゃない」と幼少時から言い聞かせられて育った著者のアンジェラ・ダックワース氏。父親が間違っていることを証明するかのようにハーバード大、オックスフォード大、マッキンゼー勤務と輝かしいエリート道を歩んでいく。さらに、別名「天才賞」で知られる「マッカーサー賞」も受賞。本書は、いわゆる「世の中で偉業を成し遂げる人々」はどういった性質があるのか、という自身の研究をまとめた本です。
努力すればできる、というのは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、本書は数多くのケーススタディを通してそれを証明していくので、説得力があります。私たち凡人にも、諦めないで続けさえすればいつかは目指すところに到達するのだ、という希望を与えてくれるのです。
私は、行動力はある方だけど何かを長い期間続けるのが苦手です。始めたその時は「よし!やるぞ!」と鼻息を荒くして高い目標を立て、その時の興奮に任せてかなりのスピードで行動を始めるんだけど、すぐに飽きてしまう。
今までに立ち上げよう意気込んだのに、ほったらかしにしてしまったプロジェクトの数々を振り返ると、穴があったら入りたいくらいです。過去にノートに書いた目標を一年後に発見してしまった時、ほんの少しも達成できていないところを見ると、自分を責めたい気持ちになります。
でもこの本を読んで、私が今まで何もかも中途半端だったのはトライ&エラーのトライはできるんだけど、エラーがあると起き上がれなかったからなのだと、はっきり気づかされました。
昔、「チャレンジ」かなんかの教材で、ボタンを押すと「やればーできる!」と音声が出る置物をもらったことがありましたが、「暑苦しいな~」と思っていました(笑)。でも本当に自分の達成したいところを目指すなら、何が何でも「やる」しかない。やり続けた人はどこかで勝つし、戦うことさえも放棄してやめてしまったら勝てるわけがありません。
努力が誰にも見られていない、評価されていない、数字になって返ってきていないと感じる時、地味ぃ〜なことをコツコツやり続けた人のみが、到達したい目標に達する。それを思い出させてくれる本書は、これからも行き詰まった時に何度でも読み返したいです。いや、すでに2回読みました。
例えば、史上最も影響力のある科学者とされたダーウィンでも、並外れた能力を持っていたわけではないと本書では語っています。ダーウィンは記憶力が平均以下で、日付さえも覚えていられないほどであったのに、何か一つのことについて考え続ける根気強さだけはあったそうです。
雑誌「ザ・ニューヨーカー」の編集者で、同誌の元イラストレーターであったボブ・マンコフ氏は、自分のイラストが採用されるまでにボツになった作品数はなんと2000。
まわりの環境はコントロールできないことは多いけど、自分が決めた何かを地味に続けるということは、自分の意思。ということはコントロールしようと思えばできることです。
印象に残った言葉は、「やり抜く力」が強い人は満足できない自分に満足しているということ。努力のプロセスはつらいかもしれないけれど、「快楽」とは違う「愉しさ」を味わえたら、気付いた時には自分でもびっくりするような場所に到達しているのでしょう。私もその日を楽しみに、やるべきことを着実にこなしていこうと思わされるのでした。
やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
アンジェラ・ダックワース
妻
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