米中関係を語るうえで把握しておくべき1冊
本書の邦訳タイトルである『米中戦争前夜』、見ただけで興味をそそられる刺激的なタイトルで、思わず財布のひもがゆるんでしまいますね!(私だけ?)
タイトルだけでなく、内容もしっかり刺激的な本書。簡単にまとめると以下のような感じでしょうか。
- 古代ギリシャのトゥキディデス(Thucydides)がその著『戦史』で述べたように、アテネとスパルタが戦った「ペロポネソス戦争」は、台頭するパワー(アテネ)が、当時支配的であったパワー(スパルタ)の地位を脅かしたことによる緊張が主たる原因
- 歴史上、ペロポネソス戦争と同じく、台頭するパワーと支配的なパワーとの間では、大部分が戦争に至っている。例えば、20世紀初頭に台頭した日本は極東で支配的であったロシアと日露戦争(1905年)を、同じような時期に台頭したドイツは世界的な帝国であったイギリスと第1次世界大戦(1914年)を戦う結果になった。
- 現在、米中間でも同じように台頭する中国と支配的な米国の対立という構図になっており、歴史に鑑みれば、米中間でもいずれ戦争が起きる可能性がある。それを避けるために、あらゆる手を尽くす必要がある。
著者であるグレアム・アリソン教授は、昔、キューバ危機を分析した『決定の本質』という古典的著作を書いたことで有名な教授です。学術的に緻密な議論を展開しつつ、上記以外にも様々な歴史的事例を参照しつつ、言わんとすることをすっきり単純明快に述べるところはさすがとしか言えません。
本書の出版(2017年)後、様々な専門家から賛否両論の反応が寄せられていることからも、本書の影響力の高さが伺えます。そういう意味で、これからの米中関係を論じるうえで、賛否はともかくとして、必読の1冊と言えるでしょう。
Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?
Graham Allison
夫
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