インテリジェンスについて耳の痛いアドバイスが満載
本書は、太平洋戦争中、陸軍のインテリジェンス部門に勤務していた筆者が、インテリジェンスの観点から太平洋戦争を振り返る本です。平易な口調で語られる、読みやすい歴史回想録として楽しむことができるうえ、日本人が今後、インテリジェンスに向き合う際の教訓がちりばめられていて、読んでいて得する気分になれる本です(笑)
歴史回想録としては、著者は主に、
- 開戦から2年がたつまで、陸軍に独立したインテリジェンス担当の部署がなく、情報部門が軽視されていたこと、
- 海軍は大艦巨砲主義、陸軍は歩兵主力主義という前近代的な思想にとらわれ、制空権という概念を軽視したこと
など、日本軍の組織的、思想的欠陥などを挙げ、太平洋戦争の敗因を考察しています。戦前の陸軍で長く勤務し、戦後の自衛隊でもキャリアを積んだ著者ならではの、専門的な軍事知識を駆使しつつ、一般の読者にもわかりやすい、読ませる文章となっているのは圧巻です。
また、筆者は、戦争という文脈から離れて、インテリジェンス一般への向き合い方についても、鋭い指摘を次々と述べています。いくつか例を挙げますと、
情報はまず疑ってかからねば駄目である。疑えばそれなりに真偽を見分ける篩(ふるい)を使うようになる(P53)
情報の仕事は職人のそれのようなものである。教えてくれと言っても教えてもらえないし、専門の教科書があるわけでもない。ただ自分がこれを天与の仕事と思って取り組んだときに初めて、経験者の体験が耳に入り、それを咀嚼し仕事に活かし、上司の片言隻句から自分で自分を育てていく以外にない。(P165)
情報の任に当たる者は、「職人の勘」が働くだけの平素から広範な知識を、軍事だけでなく、思想、政治、宗教、哲学、経済、科学など各方面にわたって、自分の頭のコンピューターに入力しておかなければいけなかった(P260)
私自身、仕事で情報分析を担っている立場ですので、本書を読んで大いに感化され、特に、最後に引用したアドバイスである、平素から様々な知識をインプットしておく重要性については、読むたびに刺激されています。もっと読書しなきゃ!(`・ω・´)
元軍人による太平洋戦争の回顧録は数多くありますが、本書はその中でも読みやすく、現代的な教訓も多く引き出せる点でおススメです!
大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇
堀 栄三
夫
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