人文・思想 哲学

永遠平和のために:平和論の古典ですが…

投稿日:2018年9月4日

永遠平和のために-イマヌエル・カントidobon.com

読みにくいわりに得られるものは少ない

本書は言わずと知れたドイツの大哲学者、イマヌエル・カントによって書かれた、平和論の古典ともいわれる本です。カントと言えば、『純粋理性批判』などの純哲学の著作が大半を占める中で、本書はカントにしては珍しい政治哲学の著作となっています。

本書は岩波文庫版でも100ページちょっとですし、軽い気持ちで読み始めてしまったのですが。。。結論から申し上げますと、ひたすら読みにくく、そして読了後に何も残りませんでした(;´Д`) と、ここで終わってしまうとレビューになりませんので、何とか読み返しつつ、中身を少しレビューしたいと思います。

本書を読んでいて思うことは、いいこと言っているけど、現実的ではなさそうという箇所がいっぱいあることです。

例えば、「戦争の原因となる常備軍を廃止しましょう」「自由な諸国家による平和連合をつくりましょう」という趣旨のことが書かれていますが、では一体それらは具体的に誰(どの国)が主導し、どうやって達成するのか。そもそも平和連合なるものはどう機能するのか。などの具体的な議論は示されないまま、理想像だけ示されてハイさようなら、という感が否めません。

軍隊をすべてなくせば平和になる、各国が一つの連合になれば平和になる、などの理想像を述べる本は数多くある中で、わざわざ本書を読む必要性はあまり感じません。

一方、専門的には、彼の主張にも鋭いところはあると思います。例えば、全ての国が共和国家(民主主義国家)になれば、民衆の反対により戦争を行うことはもはや不可能になる旨の主張をしています。これは、現在の国際関係論の理論の一つである、民主主義による平和論(Democratic Peace Theory)のきっかけとなった主張であり、現在の国際関係論においても一定の影響力を保持しているのは確かだと思います。

また、人間の自然状態は平和ではなく戦争状態であり、それゆえ平和とは作り出されるもの。すなわち何らかの措置によって保障されなければならない、との主張があります。これも、現代日本の平和論にはあまり見られない卓見だと思います。

それにしても、読みにくい!岩波文庫版のほかに、Hackett社から出ている英語版も読みましたが、英語でもわかりにくかったです(・´з`・) 原文のドイツ語を読む力はありませんが、おそらく原文からして難解な文章なのではないかと思います。

読むのに苦労する割には、得られるものは少ない、というのが率直な感想です。一般読者向けの読み物というよりは、カント哲学や国際関係論などを専門とする方向けの専門書、という位置づけが妥当かな思います。


 

永遠平和のために-イマヌエル・カントidobon.com

永遠平和のために
イマヌエル・カント

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.

国際関係、政治、哲学、古典に関する本が大好物。読書は絶対紙派(電子はちょっと苦手なのです…)。アコースティックギターが趣味で夜な夜な練習にいそしんでいる。ツンツンヘアがトレードマークで、ヘアカットをするときのお決まりの注文は「横と後ろはバリカンでトップは短く」。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-人文・思想, 哲学
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

アフターダーク 村上 春樹

アフターダーク:一晩のうちに起こる不思議な出来事を追う

変わったスタイルの小説 村上春樹の小説といえば、ちょっと孤独でパッとしない主人公が、漏れなく不思議な美女とセックスして、その美女がいなくなり…的な展開のものが多いですが、「アフターダーク」はその型には …

立派な父親になる-林道義-idobon.com

立派な父親になる:父親になる心構えを教えてくれる良書

読むと父親になる勇気がみなぎってくる 井戸本家にもうすぐ子供が生まれるあたり、私としても育児には積極的にかかわっていきたいと思っています。色々な書籍・雑誌を読んで、おむつの替え方や、お風呂の入れ方など …

保守主義とは何か- 反フランス革命から現代日本まで-宇野 重規-idobon.com

保守主義とは何か:入門書としてうってつけ

保守主義を学ぶにはまずこの1冊から! 私は政治思想について専門的に学んだことはありませんが、長い間興味を持ってきました。保守主義についてもこれまでに何冊か本を読んできましたが、その中でも本書は内容・分 …

本を読む本 - 読書家をめざす人へ本を読む本 - 読書家をめざす人へ モーティマー J. アドラーモーティマー J. アドラー-idobon.com

本を読む本 – 読書家をめざす人へ:学校で習わなかった、読書の基本を学ぶ本

読書家になりたければ、まず正しい読み方を習おう 井戸本家の本棚でブックレビューを書きはじめてから、本の読み方について正しく学びたいと思い、本書を手に取りました。 1.本の意味が分からない時は、単に単語 …

眠られぬ夜のために-カール・ヒルティ-idobon.com

眠られぬ夜のために(第1部):就寝前の読書に最適

読むとよく眠れます(笑) カール・ヒルティの本は私の愛読書の一つで、本書と彼の代表作である『幸福論』(全3巻、本書もいずれレビューします!)は、常に私の手元に置いている、まさに座右の書と言える本だと思 …