快楽を追い求めた行く末は…
時代は18世紀後半のナポレオン三世政権。オスマン計画というパリ大改造が行われ、多額の資金がパリの街に、特に不動産に流れ込んでいた時代を背景にしています。浪費と金銭主義で浮かれている街の様子は80年代の日本のバブル期を彷彿とさせるかもしれません。
その時代の中で不動産投機で一発千金を得ようとするアリスティッド・サカールの妻、ルネが物語の主人公。放蕩と浪費を重ね、それでも満足せず無気力なルネが愛人の相手として選ぶのは、サカールの先妻との子、マクシム。ブルジョワの潔癖感からくる罪悪感を押し殺し、貪るように近親相姦の関係にのめり込んでいきます。始めは仲の良い友達のような関係だったルネとマクシム。ふとしたきっかけから二人は「夜食」を共にとる仲になります。夜食をとる仲、というのは現代ではサシでディナーデート、のような感覚でしょうか。友達より一歩進んだ関係に知らずと踏み込んで行きます。そこからの展開は坂から駆け下りるように早い。きっと全ての不倫というものは、このようなちょっとしたきっかけからあっという間に元に戻れない関係まで進んでいってしまうのでしょう。
神々のように楽しむだけ楽しんで罰せられることのない幸せな世界に生きているなどと思い込んでいたのに、それが誤りだと今になってわかるのは!彼女は恥辱の国に生きてきたのであって、その罰として、自分の肉体を他人の意のままにされ、心は苦しみのあまり死んでゆくのだ p.387
壮大な社会の変化の中の、個人の人生の一コマを垣間見ました。それは「孤独と自棄の騒々しい縮図」p.394 です。
私たちは日々の小さな選択の中で、常に自分は何を建てあげているのだろう、何を創造しているのだろう、と日々問いかけるべきです。全て自分の意のままに生きてしまったら、それはルネと同じ結果を招くことになるでしょう。
自分のしたいことが、正しいことであるかを常に照らし合わせ、時間をかけながら一歩一歩進んで行くことが大切だと思いました。
獲物の分け前
ゾラ
妻の姉
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