外国文学 小説 文学・評論

獲物の分け前:18世紀後半パリ、ある女の破滅の物語

投稿日:2020年2月9日

獲物の分け前 ゾラ

快楽を追い求めた行く末は…

時代は18世紀後半のナポレオン三世政権。オスマン計画というパリ大改造が行われ、多額の資金がパリの街に、特に不動産に流れ込んでいた時代を背景にしています。浪費と金銭主義で浮かれている街の様子は80年代の日本のバブル期を彷彿とさせるかもしれません。

その時代の中で不動産投機で一発千金を得ようとするアリスティッド・サカールの妻、ルネが物語の主人公。放蕩と浪費を重ね、それでも満足せず無気力なルネが愛人の相手として選ぶのは、サカールの先妻との子、マクシム。ブルジョワの潔癖感からくる罪悪感を押し殺し、貪るように近親相姦の関係にのめり込んでいきます。始めは仲の良い友達のような関係だったルネとマクシム。ふとしたきっかけから二人は「夜食」を共にとる仲になります。夜食をとる仲、というのは現代ではサシでディナーデート、のような感覚でしょうか。友達より一歩進んだ関係に知らずと踏み込んで行きます。そこからの展開は坂から駆け下りるように早い。きっと全ての不倫というものは、このようなちょっとしたきっかけからあっという間に元に戻れない関係まで進んでいってしまうのでしょう。

神々のように楽しむだけ楽しんで罰せられることのない幸せな世界に生きているなどと思い込んでいたのに、それが誤りだと今になってわかるのは!彼女は恥辱の国に生きてきたのであって、その罰として、自分の肉体を他人の意のままにされ、心は苦しみのあまり死んでゆくのだ p.387

壮大な社会の変化の中の、個人の人生の一コマを垣間見ました。それは「孤独と自棄の騒々しい縮図」p.394 です。

私たちは日々の小さな選択の中で、常に自分は何を建てあげているのだろう、何を創造しているのだろう、と日々問いかけるべきです。全て自分の意のままに生きてしまったら、それはルネと同じ結果を招くことになるでしょう。

自分のしたいことが、正しいことであるかを常に照らし合わせ、時間をかけながら一歩一歩進んで行くことが大切だと思いました。


 

獲物の分け前 ゾラ

獲物の分け前
ゾラ

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.

妻の姉

歴史小説や古典、社会学系の本など、幅広く読む。ウエディングドレスデザイナーなのでファッション系の本も好き。妹以上にモノを増やしたくない派なので、本は基本的に図書館で借りる。2児の母。時には辛口レビューを書くこともある。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-外国文学, 小説, 文学・評論
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

その女アレックス-ピエール・ルメートル (著)、橘明美 (翻訳)-idobon.com

その女アレックス:毎章ごとにこんなにがらっと展開の変わる小説は初めて

完全に普通じゃないミステリー小説 表紙の絵と裏表紙のあらすじからして、女性の誘拐の話かなと思って読み始めました。アレックスという女性は男に誘拐され、想像を絶する残忍な状態で監禁されます。普通のミステリ …

嵐が丘<上>-E・ブロンテ-idobon.com

嵐が丘:恋愛小説で終わらない、もっと普遍的な題材を扱っている小説

嵐が丘 「リア王」、「白鯨」と並んで三代悲劇と言われた本に希望を見出す 「次、何読もう?」と常に考えています。そして、良書を探すためにはいつもアンテナを張っています。読書家の友達からのおすすめだったり …

高慢と偏見(上)-ジェーン・オースティン-idobon.com

高慢と偏見:男性にこそ読んで欲しいプリンセスストーリー

男性はダーリー氏の姿勢からモテを学べ 何度も映画化され、おそらくジェーン・オースティンの作品の中で最も有名な小説である「高慢と偏見」。なんと21歳の時に書いた処女作だそうです。 この物語はキャラクター …

82年生まれ、キム・ジヨン-チョ・ナムジュ (著), 斎藤 真理子 (翻訳)-idobon.com

82年生まれ、キム・ジヨン:韓国の女性の生きづらさを描いた100万部突破のベストセラー

韓国での女性の扱いは日本のバブル時のよう 韓国人と日本人のハーフの娘を持つ友人が、旦那さんに勧められて読んだというので、私も興味を持って読んでみました。 本書は韓国ではベストセラーになっています。 ス …

美しく怒れ-岡本太郎-idobon.com

美しく怒れ:ハッとさせられるところの多い本。日本人が忘れがちな大切な視点を教えてくれる

岡本太郎さんに叱られて人生を見つめなおそう 20世紀を生きた芸術家、岡本太郎さんが日本人の生き方について熱く物申す本です。 この本は2011年初版ですが、岡本太郎さんは96年没。それ以前に太郎さんによ …