持っていないものではなく、すでに与えられているものに感謝を捧げる心こそ、幸せの秘訣
韓国の女子大生イ・チソンさんは、ある日大学の帰りに交通事故に遭います。車に同乗していたお兄さんによって救出されますが、すでに全身に火がついていました。病院に着くころには全身真黒焦げで、瀕死状態に。一命を取り留めたものの、その後何十回もの皮膚移植手術を経験しなければなりません。誰が見ても明らかな美人だったチソンさんの美貌は失われ、平凡な大学生が「障害者」となってしまいます。
出典:brunch beta
そんなチソンさんが困難に立ち向かえたのは、敬虔なクリスチャンであったから。本書では、辛い治療を重ねて行く中でも、チソンさんやご家族が感謝の心を忘れずに、神様を信じ続ける姿勢を学ぶことができます。
この本を読み始めたきっかけは、私が以前酷いニキビを経験した話を友人にしたところ、本書を貸してくれたのです。私は2016年から2017年の間、ひどいニキビに見舞われました。今まで綺麗だと思っていた自分のお肌が、長年飲んだピルをやめたことがきっかけで、人生最悪のニキビに覆われてしまいました。おでこや顎、フェイスライン、首からデコルテまでたくさんのニキビができ、人前に出るのが辛くて仕方がありませんでした。その時の様子についてはこちらに少し書いています。
その経験から学んだのは、私がいかに「美貌」という一瞬にして崩れ去ることのあるものに、人生の価値を置いていたかということ。
私の場合はチソンさんの全身火傷と比べたらニキビという可愛いものでしたが、人の目に着く自分の顔面がどんどん醜くなっていくのが苦しくて・・・外向的だったのに引きこもりたくなり、会話をするときも人が自分のニキビを見ているのではないかと怖くなり、うつむきがちになってしまいました。
でもよく考えたら、私の存在価値は変わりません。それなのに、外見が以前とは変わってきただけで、どうしてそんなに落ち込むのだろう・・・ニキビを通して人生の価値観を教えられたのでした。
チソンさんは顔面の皮膚さえなくなり、包帯グルグル巻きの期間が何カ月も続きます。皮膚のない部分に消毒液を塗られるのは、魂が抜けそうになるほど痛いそうです。皮膚を移植した後も、上手く着床せずに委縮してきたりして、引きつりにより痛みや痒みに悩まされます。
そんな苦しい中でも、チソンさんは神にすがり、どんな時でも感謝を捧げる心を与えられます。彼女の手記を読んでいると、そんな心もチソンさんが元々持ち合わせていたものではなく、神にお願いして「いただいたもの」であるということが読み取れます。
「欲」を出さないで、すでに頂いているものに感謝する
症状が少し軽くなってくると、街中を歩いている平凡な女子大生を見て、チソンさんは「自分もあんな風に暮らせたらな」と思い始めます。ですが、そんな自分を「欲が出てきた」といって度々戒めています。
そして、あんな事故に遭っても生き延びられたこと、温かい家族や友人に囲まれていること、症状が良くなってきていることなどに思いを馳せ、感謝を捧げます。そんなチソンさんは、事故前の自分に戻してあげると言われても、戻りたくないといいます。今のままで十分幸せだと。
私も、ニキビがすっかり良くなると、次は別の問題を見つけては悩んだりを繰り返していました。そういう時は、感謝の心を忘れているのです。この本を読みながら、体のどこも痛くなくて健康なこと、衣食住が与えられていることなど、あたりまえなことがいかに感謝なことか思い出させられました。
現代の日本は、ほとんどの人が雨風をしのぐ家に住み、毎日食べるものに困ることなく生きることができます。それなのに、日本人の幸福度は低いといわれています。
物質的な欲求が満たされてしまうと、人間の心は問題を探し始めます。そんな、満たされているのに満たされていない世界に住む私たちこそ、毎日与えられているものに感謝する習慣が必要だと思います。そんな姿勢を、チソンさんから改めて思い出させられました。
チソン、愛してるよ。
イ・チソン(著)、金重明(訳)
妻
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