イタい大人になっていないか見直す機会に
この本は子供向けの本のイメージが強いかもしれませんが、読むときの自分の状態によって感じ方が変わるので、大人になっても何かの折に何度も読み返したい本です。
結婚を機に渡米することになった時、友達が本書を贈ってくれました。表紙には金箔が施されていて、部屋に飾っても素敵なインテリアになりそうな美しい単行本です。「私の大好きな本なんだ」といって贈ってくれた友人。
当時25歳だった私はこの本を読んでどんな印象を受けたのかは覚えていませんが、30歳になった今、改めて読んでみてまた気付かされることがありました。
王子さまは、大切にメンテナンスしていた自分の星を後にして、色々な星を旅します。そこでは、「変な大人たち」に出会います。威厳がありげだけど実は何も治めていない王様、褒められることだけが生きがいの大物気取り、飲むことを恥じているのに恥じていることを忘れようと酒を飲み続ける酒びたり、指示されたことをやり続けるが自分の頭で考えないランプの点灯人。
「大人って変なの!」と何度も繰り返す王子さま。そんな大人への皮肉な描写から、「ちょっと待って、大人ってここおかしくない?」という視点に気付かされます。
私たち大人が重要と思っているものは、実は「大人」という眼鏡を外してみてみると、そこまで重要じゃなかったりします。本当に大切なことは、わずかです。
30歳になって、家庭を持ち、仕事でも独立している今、私はある意味社会のしがらみから自由な状態です。この本を友人が贈ってくれた25歳の頃より、「本当に大切なこと」が分かるようになったかな、と自分を振り返りました。
この本では「大人たち」を皮肉るシーンが多々見られますが、大人になること自体ではなくて「盲目な大人になること」を揶揄しているのではないかと思います。
夢を見ているような錯覚を得る本
全体的に不思議な雰囲気のストーリーなので、夢を見ているような錯覚に陥るのが特徴です。
サン=テグジュベリ自身は、この本の語り手である「僕」と同じように飛行士で、リビア砂漠に不時着したことがあったようです。ミステリアスで現実には起こり得ないようなことばかり出てくるのに、実話のような錯覚を得られるのは、彼自身が本当にリビアの砂漠で星の王子さまに巡り合っていたからかもしれませんね。
星の王子さま (新潮文庫)
サン=テグジュペリ (著), 河野 万里子 (翻訳)
妻
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