男性はダーリー氏の姿勢からモテを学べ
何度も映画化され、おそらくジェーン・オースティンの作品の中で最も有名な小説である「高慢と偏見」。なんと21歳の時に書いた処女作だそうです。
この物語はキャラクター設定がはっきりしていて、主人公をとりまく人物が読んでいて想像しやすく、読みやすい作品です。
5人姉妹のベネット家の中でミス・ベネットとも呼ばれる長女のジェーンの次に美人なエリザベスは、高貴だけれどちょっと皮肉で、自分よりも身分が上の人にも思ったことをはっきり言う快活な主人公。同じくオースティン作の「エマ」主人公とはまた違ったキャラクターで、好感が持てます。
そのエリザベスが、ダーリー氏とのやりとりを通して精神的に成長するストーリー。そのはっきりした性格から、当時のイギリス上流社会ではまたとない玉の輿である、裕福で傲慢な求婚者ダーリー氏の求婚を斥けます。
金銭欲に左右されず、それが偏見だったとはいえ、自分の考えを貫き通すエリザベスはきっとフェミニストからも拍手喝采だったと思います。ダーリー氏も自分の富と地位による、エリザベスへの優越感から、高慢で自分勝手な求婚をしたことを認め、改めます。
その経験から、一度斥けられても新たにアプローチをするダーリー氏にもほろり。草食男子が多い現代日本にこれだけ思いやり深く、熱心で、謙遜な男性、いるのでしょうか。オースティンの小説は女性に人気かと思いますが、ダーリー氏の成長と高潔を是非男性にこそ読んで学んで欲しい。
スッと物語に入り込んで読める素敵な物語ですが、エリザベスと、彼女の周りの女性達が皆幸せになるという、少し現実味のかけたストーリーなのは、夢見がちな21歳の作品ならではなのでしょうか。
また、当時の社会の中心的存在であった教会や、「神」の存在が全く垣間見れないのは驚きです。例えば同じ時代の作家、トルストイなどと比べてその方面の葛藤は全く描かれておらず、宗教感が全くありません。
当のオースティンは41歳で未婚で病気の為亡くなります。彼女の物語の中の主人公との対比が少し皮肉でもあります。
高慢と偏見(上)岩波文庫
ジェーン・オースティン
高慢と偏見(下)岩波文庫
ジェーン・オースティン
妻の姉
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