私の2015年2月はほとんどこの本に吸い尽くされた
村上春樹のとんでもなく長い小説ということで、手に取ることを躊躇していた本書。
アメリカにいたときに一緒に2週間もロードトリップをした友人が、旅行期間中ずっと熱心にこの本を読んでいたんですよね。そして、ある日こう聞かれたんです。「ユミ、日本語ではabsconedという言葉をよく使うのかい?英語ではあまりに古い単語なんだけれど。」
absconed!ググったら逃走するとか持ち逃げするとかいう意味ならしい。どうやら主人公の天吾の母親かabsconedしたという文脈で使われているとのことだが、日本語版ではなんて書かれているんだろう!「蒸発」とかかな?気になる!
ってことでその時は日本語版が手に入らなかったので、とりあえず英語版を読むことにしました。母国語の小説をあえて英語で読むのは邪道な気がしたけど、読み始めたら止まらなくなってしまいました。私の2015年2月はほとんど1Q84で費やされた(いや、あるいは1Q84に迷い込んだ。笑)。でも、今まで読んだ春樹本の中で一番面白かったです!
孤独について、宗教について、愛について、など色々な問題をカバーしていると思います。3人の主人公それぞれの目線でストーリーが展開していくのも、ハラハラドキドキ。
印象に残ったシーンは、青豆が宗教団体「さきがけ」の教祖の深田を殺しに行くシーンで、彼がこんなことを言っていたところ。
Most people are not looking for provable truths. As you said, truth is often accompanied by intense pain, and almost no one is looking for painful truths. What people need is beautiful, comforting stories that make them feel as if their lives have some meaning. ―人々は厳しい真実なんて探してはいない。真実にはしばしば激しい痛みが伴うから。だから人々は、美しくて心休まるストーリーを探しているんだ。自分たちの人生も何らかの意義があると思わせる何かを。
※日本語版を読んでいないので訳はテキトーです
そうか、だからみんなふわっとしたたとえ話が好きなのか。メディアではしばしば複雑な事実よりも、ぱっと見すごそうなことが取り沙汰されます。私もPRやメディア運営に携わってきたので経験してきたのですが、「そこがポイントじゃないんだけどな〜」ということでも、分かりやすくすごいことばかりが強調される。そうしないと人々が見てくれないから。
そういうところが、深田の言っていることと通じるのかと思います。
天吾が作っていた炒め物、美味しかったよ
余談ですが、天吾が作っていたエビとアスパラとマッシュルームのごま油生姜炒め、描写があまりにも美味しそうだったので何度か作ってみました。これはハマるお味!
そういう発見もあって面白い本でした(笑)。
それからこの本に出てくるヤナーチェクのシンフォニエッタは、読んでいる間ずっとバックグラウンドで聞いていました。小説って音楽やら料理やら言葉やら、新しい発見がたくさんあって楽しいですよね。
ちなみに後で日本語版を確認したら、absconedは「逐電(ちくでん)」と書かれていた…そんな語、日本語でも滅多に使わないですよね。そういう意味で、訳者の方すごいです。
1Q84 – Vintage International
Haruki Murakami
1Q84
村上春樹
妻
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