題名も表紙もなんかちゃらいけどかなり専門的な本
著者の斉藤糧三ドクターは、機能性医学(functional medicine)を米国から学び、日本でいち早く取り入れている方です。機能性医学とは、症状が起こったら手術や薬の投与で治療するという従来の医学と異なり、問題の根本を探るアプローチです。患者の食事、運動、ストレスレベルなどライフスタイル要因を加味して治療法を提案し、根本原因をゆっくり排除していこうという治療法です。
私もヘルスコーチとして、このアプローチには完全同意で、機能性医学を実践しているドクターや医療従事者の発信するコンテンツから、たくさん学ばせていただいています。
さて、本書は題名も表紙もなんだかちゃらく見えますが(失礼!)、とても専門的な本です。アレルギーのメカニズム、従来の花粉症へのアプローチとその問題点、ビタミンDの効用など、かなり掘り下げて解説されています。
なので、ゆるい健康本だと思って手に取ると結構びっくりします(笑)
IgG抗体、Th2細胞、免疫グロブリン・・・などなど専門的な用語が飛び交っているのですが、ふわっとした健康情報にうんざりしている健康オタクとしては目から鱗な情報源でした。
私もかなりひどい花粉症の持ち主です。
食事制限や体質改善でだいぶ改善したものの、砂糖や小麦粉を食べ過ぎたり、疲れ気味だったり、腸内環境が乱れていると、ひどいくしゃみ&鼻水アタックに見舞われてしまいます。
今年は妊娠のため、花粉症の薬は全く飲めませんでした。冬季や雨季はビタミンD欠乏症になりやすいので、ビタミンDのサプリは常に家にストックしているのですが、この花粉症のシーズンは少し意識して毎日飲むようにしてみました。日にもよりますが、本書の言う通り飲んでから30分くらいすると少し症状が治まる気が…プラセボ効果もあるのかもしれませんが^^;
でもビタミンDは体内に蓄積するし、住んでいるところや肌の色によって必要な量が違うので、やみくもに自己判断で接種するのは危険かもしれません。妊婦も摂りすぎは危険という情報もあるし(一応かかりつけの産科医には許可取りました)。本書ではタンニングマシンも勧めていますが、皮膚がんのリスクもありますからね。
目から鱗な栄養の知識&トリビア
ビタミンDとAの受容体が同じだから、Dが体内に蓄積しすぎるとAが足りなくなり、夜盲症になったり目がかすんだりする、というのもなるほど~と思いました。
本書でいちばん目から鱗だったのは、アルプスの少女ハイジのクララは、ビタミンD欠乏症からなる「くる病」だったのではないかという件。「くる病」とは骨密度や筋力の低下により、歩けなくなったり低身長になってしまう病気。骨粗しょう症の成長期バージョンです。
クララが住んでいた当時のフランクフルトは、工業化により大気汚染が進んだ大都会。そのため、日光が遮られてビタミンD欠乏症になっていたのではないかとのこと。
そして空気が澄んでお日様も陽気なスイスに移住してハイジと出会い、外で遊ぶようになったことから、ビタミンD欠乏症が改善→骨密度UP→「クララが立ったぁあああ!!」の奇跡の瞬間が実現したわけです。
思わず、へぇえええええ!と、うなってしまいました(笑)。
機能性医学は、アメリカでは近年かなり臨床するドクターが増えてきていますが、日本ではまだまだ認知度が低いです。というか保険適応外なので、一般ピープルにはなかなか気軽に利用できません。
でも、最先端医療を駆使しても、治療は症状を抑えることがメインで、病気の根本原因を排除できるわけではない、という事実が明らかになってきている今、機能性医学は今後主流のアプローチになっていくことかと思います。特に糖尿病や、アレルギー・喘息などの自己免疫疾患の分野においては。日本に浸透するのはいつかわかりませんが、世界ではすでにそういったムーブメントが起こっています。
でもやはり、個人レベルでの健康リテラシーを上げていくのが、自分の健康を守ることにつながると思います。本書はそういう意味でも、おすすめしたい本です。そして、花粉症だけどもう薬漬けはうんざりという人にも、一読の価値ありです。
サーファーに花粉症はいない
斎藤 糧三
妻
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