『こんにちは、妻です。読書好きな妻の姉もたまに寄稿してくれることになりました。ところが・・・しょっぱなからかなりお怒りのようです。』
『どうも妻の姉です。よろしくお願いします!この本には怒りすぎて、妹夫婦のブログに乗り込まずにはいられませんでした。』
『姉様・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル』
『(今のところ)比較的マイルドレビューでお送りしていた井戸本家の本棚、姉様がパンチを与えてくれるでしょう・・・ということでウェルカム!』
なぜこれが文学賞受賞なのか解せぬ
著者の前作、「掏摸」の兄妹篇。「掏摸」もかなりの愚作だったが、初めて読む著者の本は2度までチャンスを与えるようにしている。1度目はミスっても、2度目は素晴らしい、ていうことも可能だし。
そんな期待を裏切られた本。なぜ現代の小説はこういうものばかりなんだろう?大した事ないあらすじを少しのスリラー、暴力、セックスシーンで飾り立て、最後まで読ませる。終わった後はつまらない映画(というよりもAV?)を見た後のような苦い後味。キリスト教、ソクラテス、グノーシス主義などの言葉をばら撒き、インテリを気取っているけれど、キリスト教の理解は主流の理解からはとうに外れている。
主人公のユリカのモノローグ、特に彼女が木崎と呼ばれる男と交わるシーンなどは、いかにも男性が女性のふりをして書いたもののような無理がある。これは女性心理ではなく、男性の勝手な妄想だ。女性の心理を細かく描き、「なんで男性なのにこんな女性心理の描写が出来たんだろう?」と驚いたトルストイのアンナ・カレーニナとは雲梯の差。
中村文則を読むきっかけは、電車のつり革で、同著者原作の映画、「去年の冬、きみと別れ」の広告を見たことから。子供がいて映画に出向く時間はないが、話題作は本で読んでおこう、とアマゾンで検索した結果、レビューがかなり悪かったので読むのは辞退した。他に「掏摸」というベストセラーがあり、世界中で翻訳されて絶賛されているということでそちらを拝読。「掏摸」は主人公が男性であるからか、モノローグが「王国」の女性主人公より自然で、まだ楽しめた。
この本から得たものは何だったのだろう?失ったものの方が多い。私の2時間を返せ!
神的存在の木崎、その欲望を満たすために用いられる運命だったユリカ。こんな男性優越的な小説をしゃあしゃあと世の中に出版できる著者、それを喜んで読んでしまうコンシューマーにも日本社会の問題点が見られると思う。
酷評しましたが読んでみたい人もいるかも・・・?
王国
中村文則
妻の姉
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