エッセー・随筆 文学・評論

美しく怒れ:ハッとさせられるところの多い本。日本人が忘れがちな大切な視点を教えてくれる

投稿日:

美しく怒れ-岡本太郎-idobon.com

岡本太郎さんに叱られて人生を見つめなおそう

20世紀を生きた芸術家、岡本太郎さんが日本人の生き方について熱く物申す本です。

この本は2011年初版ですが、岡本太郎さんは96年没。それ以前に太郎さんによって書かれた言葉たちをまとめたものですが、そうとは思えないほど現在に当てはまる内容ばかりで、気付かされることの多い本でした。

岡本太郎さんは多感な青年期の10年間をフランスで過ごすわけですが、1940年に日本に帰国。終戦後からは、前衛芸術家としての活動から、文筆活動、メディア出演、巨大アートな制作など幅広く活動されています。まさに自分の情熱に人生の舵取りを任せて、精力的に生き抜いた方という印象を受けます。

この本で印象に残った言葉の一つが、「本職は人間」という言葉。

「本職?そんなのありませんよ。バカバカしい。もしどうしても本職って言うんなら『人間』ですね。」

岡本太郎さんは本書の中で、もっと子供のような純粋さで世界を見つめて、思いっきり遊べと言っています。子供のように、好奇心の任せるままにいろんなことにトライしていいんだと。読み進めながら、自分はちゃんと「この世界で遊べてるか?」ということを自問自答させられます。

アーティストならではの素敵な言葉の言い回しが多いのも特徴です。毎日の仕事の忙しさや、日々の細かい作業に追われる中で陥りがちな、左脳的思考パターンをいい意味で崩してくれます。

「個性的であろうとして、個性を失っているのは、まことに現代的矛盾である。」

「遠慮しないで、もっと好きな色をひききればいい。」

「夏の美しさは、人間の肉体の誇らかな開放にある。」

また、この本の中で一番ハッとさせられたのは、ドラマなどのフィクションにハマることについての岡本太郎さんのコメントです。

「自分自身が本当に充実していたら、あんな空虚なリアリズムにうつつをぬかしてはいられない。自分の生活自体がいい加減だから、幻影に引かれるのだ。」

私はストレスがたまったりすると、えんえんとドラマを見てしまう悪い癖があります。ひとつシリーズを見始めると、中毒のような状態になってしまい、一日中見てしまいます。その傍らで、目標を達成するためにやるべき作業には手つかず。そんな自分は人生に対していい加減な態度だったんだなと思わされました。

このように心にグサっと来る言葉が多く、岡本太郎さんにしかられて人生を軌道修正しなきゃと思うきっかけになるので、たまに立ち止まって読みたい本です。


 

美しく怒れ-岡本太郎-idobon.com

美しく怒れ (角川oneテーマ21)
岡本太郎

Amazonで見る 楽天で見る

 

 

The following two tabs change content below.

体や栄養に関するマニアックな本、経済・投資関連の本、社会学系の本が好き。モノを増やしたくないので本はできる限りデジタルにしたいと思っている。ミステリー&サスペンス系の小説が好きだが、はまり込むと家事や仕事をおろそかにするのでたまにの楽しみにしている。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-エッセー・随筆, 文学・評論
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

ビルマの竪琴-竹山道雄-idobon.com

ビルマの竪琴:人としての大切なものは何かを考えさせてくれる小説

読むと思わず胸が熱くなる 本書は、ビルマ(現在のミャンマー)を舞台に、第2次世界大戦中に派遣された日本の兵士の方々の、戦争中の様子から戦争後に帰国するまでの様子を描いたフィクションです。この物語は、昭 …

パリ行ったことないの-山内マリコ

パリ行ったことないの:やりたいことを始めるのに待たなくてもいいのだと思わされる

やりたいことを始めるのに待たなくてもいいのだと思わされる 友達がオススメしてくれたこの本、タイトルと表紙の絵が可愛くてすぐさま読んでみたい気持ちになりました。数時間でサクっと読める短い小説です。 スト …

男の作法-池波正太郎-idobon.com

男の作法:大物作家が語るカッコいい大人論

カッコいい大人にあこがれる方へ 大学生時代、無性に「カッコいい大人な男」にあこがれた私は、この池波正太郎著「男の作法」に魅せられました。 筆者は、「剣客商売」「真田太平記」などの時代小説で知られた作家 …

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと-西原理恵子-idobon.com

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと:この本を中学生女子の課題図書にすべし

女として生きていくことのシビアな現実を教えられる本 漫画「ぼくんち」や「毎日かあさん」の作家、西原理恵子さんが若い女性に贈るメッセージの詰まった本。今年、女の子の親になったので、親目線も持ちつつ読ませ …

獲物の分け前 ゾラ

獲物の分け前:18世紀後半パリ、ある女の破滅の物語

快楽を追い求めた行く末は… 時代は18世紀後半のナポレオン三世政権。オスマン計画というパリ大改造が行われ、多額の資金がパリの街に、特に不動産に流れ込んでいた時代を背景にしています。浪費と金銭主義で浮か …