世界的ビジネスリーダーが説く本当の意味で揺るがされない人生
世界的に影響力のあるモチベーショナルスピーカー、コーチ、起業家であるトニー(アンソニー)・ロビンスが、世界の最強な投資家たちにインタビューして書いた本書。資産運用のコツから人生の意義まで、広い範囲でいかにして豊かな人生を送れるのかということを説いた本。
ものすごい体が大きくてゴリラみたいに低い声でパワフルにしゃべるトニー・ロビンス。彼は世界中のあちこちで何十万も何百万もするセミナーを開催している人で、スピーチも聴衆の感情を煽って「YEAH!!!」といった感じなので、なんとな~くキナくさいイメージがありました。でも、あるポッドキャストのインタビューを聞いて、「あ、彼は本当に世界を良くしたくてやってるんだな」ということを知って、本書を手にしました。
本書の売り上げも、Feeding Americaという飢餓対策活動をしているチャリティ団体に寄付されるのだとか。トニー・ロビンスの他の著書の売り上げと、個人的な寄付を合わせて、すでに2億5000万食以上もの食事を必要な家庭に届けているそうです。他にも、インドのとある地方に安全な水を届けるための慈善活動を熱心に行っており、彼の高額なセミナーも、私欲のためではなく富の分散のためにやっているのねということがわかり、尊敬の念が増しました。
彼自身も家庭内暴力のある貧しい家庭で育ったからこそ、底辺から這い上がって人生をよくしようという強い思いがあり、それがエンジンとなって今の成功があると語っていました。そして、彼の手掛けているビジネスからコーチング、チャリティ活動から全てが、同じように貧困と絶望の中にある人たちを助けたい、という情熱の延長線上にあるのだそうです。
さて、本書の内容ですが、3つのセクションに分けられます。1つ目が賢い投資運用の仕方や節税に関して、2つ目が金融危機から身を守るための具体的なアクションプランです。ここで終わってしまえば、かなり実用的な資産運用本になってしまうのですが、3つ目のセクションでは、真に満ち足りることの意味について語られているのが特徴です。
投資の方針は実にシンプルで、基本的にインデックス投資を行うべきということ。本書は世界的に名をはせた投資家であるウォーレン・バフェットやジャック・ボーグル、デイビッド・スウェンセン、レイ・ダリオなどにインタビューをした内容をもとに書かれているのですが、年利20%以上の運用功績を持つ凄腕の投資家たちも、結局のところ言っていることは同じということが読み取れます。
その他にも、下記のような見解が過去のデータをもって示されていて、むやみなトレードや短期投資は無意味だなと思わされました。
- 今までの金融危機の全てにおいて、数年後には落ちた以上に上がっているので、あわてて売ることこそが負け
- 史上最悪の日に投資しても、史上最高の日に投資しても、長期保有すればリターンに壊滅的な差はない。一番壊滅的な差があるのは、全く投資をしなかった場合
- アクティブファンドで運用してもフィーが高すぎるので、長い目で見るとインデックスファンドには勝てない
ただし、これらの意見は世界経済が成長し続けるという前提があってこそなので、この法則がいつまで有効かはわかりませんが…。
実用的な投資運用&節税方法のセクション1と2からはガラッと変わって、最後のセクションではかなり精神的な部分に迫っています。核心となるメッセージは、経済的自由を手にしたところで、幸せになれるというわけではないんだよ、ということ。社会的・経済的に成功しているように見える人でも、不幸せな人は数え切れないほどいます。
トニー・ロビンスは、現状に満足しつつ、成長し続けようとする姿勢の大切さを訴えかけています。そして、得ようとすることよりも与えることによって、私たちは真に豊かになるのだと。
なかばネタバレなレビューになってしまいましたが、賢い資産運用術も教えつつも、最後は心の豊かさについて説いている部分が、普通の資産運用本とは一味違うところだと思います。投資をするにあたり、とても大切なマインドセットの持ち方を教えてくれます。
これから投資を始めようという人、そして色々投資を試したけどうまくいかないという人に、ご一読をおすすめします。
Unshakeable: Your Financial Freedom Playbook
Tony Robbins(トニー・ロビンス/アンソニー・ロビンス)
妻
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