小説

王国:スリラー、暴力、セックスシーンで飾り立てられた男性優越的な小説

投稿日:2018年4月30日

妻

『こんにちは、妻です。読書好きな妻の姉もたまに寄稿してくれることになりました。ところが・・・しょっぱなからかなりお怒りのようです。』

妻の姉

『どうも妻の姉です。よろしくお願いします!この本には怒りすぎて、妹夫婦のブログに乗り込まずにはいられませんでした。』

妻

『姉様・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル』

『(今のところ)比較的マイルドレビューでお送りしていた井戸本家の本棚、姉様がパンチを与えてくれるでしょう・・・ということでウェルカム!』

王国-中村文則-idobon.com

なぜこれが文学賞受賞なのか解せぬ

著者の前作、「掏摸」の兄妹篇。「掏摸」もかなりの愚作だったが、初めて読む著者の本は2度までチャンスを与えるようにしている。1度目はミスっても、2度目は素晴らしい、ていうことも可能だし。

そんな期待を裏切られた本。なぜ現代の小説はこういうものばかりなんだろう?大した事ないあらすじを少しのスリラー、暴力、セックスシーンで飾り立て、最後まで読ませる。終わった後はつまらない映画(というよりもAV?)を見た後のような苦い後味。キリスト教、ソクラテス、グノーシス主義などの言葉をばら撒き、インテリを気取っているけれど、キリスト教の理解は主流の理解からはとうに外れている。

主人公のユリカのモノローグ、特に彼女が木崎と呼ばれる男と交わるシーンなどは、いかにも男性が女性のふりをして書いたもののような無理がある。これは女性心理ではなく、男性の勝手な妄想だ。女性の心理を細かく描き、「なんで男性なのにこんな女性心理の描写が出来たんだろう?」と驚いたトルストイのアンナ・カレーニナとは雲梯の差。

中村文則を読むきっかけは、電車のつり革で、同著者原作の映画、「去年の冬、きみと別れ」の広告を見たことから。子供がいて映画に出向く時間はないが、話題作は本で読んでおこう、とアマゾンで検索した結果、レビューがかなり悪かったので読むのは辞退した。他に「掏摸」というベストセラーがあり、世界中で翻訳されて絶賛されているということでそちらを拝読。「掏摸」は主人公が男性であるからか、モノローグが「王国」の女性主人公より自然で、まだ楽しめた。

この本から得たものは何だったのだろう?失ったものの方が多い。私の2時間を返せ!

神的存在の木崎、その欲望を満たすために用いられる運命だったユリカ。こんな男性優越的な小説をしゃあしゃあと世の中に出版できる著者、それを喜んで読んでしまうコンシューマーにも日本社会の問題点が見られると思う。


 

酷評しましたが読んでみたい人もいるかも・・・?

王国-中村文則-idobon.com

王国
中村文則

Amazonで見る 楽天で見る

 

 

The following two tabs change content below.

妻の姉

歴史小説や古典、社会学系の本など、幅広く読む。ウエディングドレスデザイナーなのでファッション系の本も好き。妹以上にモノを増やしたくない派なので、本は基本的に図書館で借りる。2児の母。時には辛口レビューを書くこともある。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-小説
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

The-Kite-Runner-Khaled-Hosseini-idobon.com

君のためなら千回でも(The Kite Runner):犠牲、裏切り、悔い改めのストーリー

イスラム教の世界だけどすごく聖書的なストーリーだと思った PR会社で働いていたころ、ある会社の社長のPRをする機会がありました。雑誌やオンラインメディアのインタビュー枠を取ってくる仕事だったのですが、 …

Fitness Junkie-Lucy Sykes-idobon.com

Fitness Junkie:ニューヨークのヘルス&フィットネスシーンはここまできたか

Fitness Junkie 健康&フィットネスオタクなら読みたい一冊 ニューヨークの今どきのヘルス&フィットネスシーンを織り交ぜながら、一人のアラフォーの女性のボディイメージやキャリアの葛藤 …

ピンクとグレー-加藤シゲアキ-idobon.com

ピンクとグレー:スピード感のある物語だが・・・ネタバレ注意

ティーネイジャーにはうけるのかも。でも深みに欠ける感はぬぐえない 14歳のおともだちから勧められました。最近読んだ本で、これ面白かったよって。アイドルが書いた本だそうで、読むの気乗りしなかったのですが …

二年間のバカンス-十五少年漂流記 ジュール・ヴェルヌ

二年間のバカンス 十五少年漂流記:小中学生の男の子に読んでもらいたい

明るく、勇気を持つことを教えられ、力付けられる本 「海底二万里」などで有名な19世紀のフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの小説、「二年間のバカンス」を読みました。 15人の少年達が無人島に漂流してし …

初恋(光文社古典新訳文庫)-トゥルゲーネフ-idobon.com

初恋:日常にキュンキュンさが足りていない人におすすめ

「初恋」はその名の通り、16歳の少年が初めての恋を知る話です。素直で純粋な青年の心の中をのぞいているようでキュンキュンさせてくれます。 ストーリーは主人公のヴラディミールが初恋の思い出を回想するところ …