明るく、勇気を持つことを教えられ、力付けられる本
「海底二万里」などで有名な19世紀のフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの小説、「二年間のバカンス」を読みました。
15人の少年達が無人島に漂流してしまい、子供達だけで二年間生活する、という物語。ヴェルヌの作品は子供の小説、特に少年向け小説として親しまれているようですが、大人でも楽しめる本。
ディケンズの「デイビッド・コッパーフィールド」のような明るさがあり、手放しにほっこり心温まる小説です。
ニュージーランドの寄宿学校に行っていた8歳から15歳の少年15人が、ふとしたことから漂流し、南アメリカの無人島にたどり着きます。大人は一人もいない。何とか助けが来るまで生き抜かなければいけない。そんな状況でこの少年達は大人社会にも顔負けに生き抜いていきます。選挙によってリーダーを選出し、すでにある食べ物や狩のための弾丸や洋服などのリストを拵え、さらに漂流中の日記までつける。生活の出来る様な場所を見つけ、狩によって食べ物を蓄える。そして余った時間には船に積んであった本をもとに上級生が下級生を教える、というミニ学校まで始めてしまう!上級生は教えるために自分でも勉強し、教えることによりさらに知識を深めていく。日本の一般的な学校制度よりも、このように困難にぶつかってそこからサバイバルしていくような学びのスタイルの方が、本当の力になっていくのではないかと思わされます。
ほんとうをいうと、生活の困難とか、生活の必要を満たすためにやりつづけなければならないたたかいとからたまたま起こるあらゆる種類の出来事にぶつかって、どうするかをきめたり、想像をはたらせたりすることの必要とか、そうしたものこそ彼らに人生をまじめに教えるようかな思われる。p. 215
「想像をはたらかせる」! これこそ現代の教育に欠けていることではないでしょうか。想像を働かせる時間がある前に、答えが与えられてします。もしくは忙しい生活の中で、想像を働かせるような時間もとれない。
また、こんな言葉にも励まされました。
おそろしいことに出会うたびに、それをおこなう。
努力できる機会を、けっして失ってはならない。
どんな疲れを軽くみてはいけない。なぜなら、役に立たない疲れはないからである。
こうした教えを実行すれば、体もしっかりするし、心もしっかりするものだ。p. 216
無人島に子供達が漂流する、という物語の前提は以前レビューを書いた、ウィリアム:ゴールディングの「蝿の王」と似ていますが、話の内容、雰囲気、目的は「二年間のバカンス」は全く違ったものです。明るく、勇気を持つことを教えられ、力付けられる本。小中学生の男の子には是非読んでもらいたい。
二年間のバカンス-十五少年漂流記
ジュール・ヴェルヌ
妻の姉
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