少女時代をプラハのソビエト学校で過ごした米原万里さんの回想録
共産党員の娘としてうまれた米原万里さんは、父の仕事の関係で9歳~14歳プラハで過ごし、現地学校ではなくソビエト学校に通われます。この本は、その時に出会った親友たちを31年後に訪ねていき、ソビエト学校で過ごした日々の思い出や、再開を果たすまでの貴重な体験を綴った本です。
小説かなと思って読み始めたので、60年代を東欧・中欧の世界で過ごしたリアルな体験記に目からうろこでした。米国や西欧を知っているだけで「海外」を知った気になってしまいがちですが、60年~90年代にかけて東欧・中欧で何が起こっていたのか、全くと言っていいほど知らなかったので、視野が広がりました。
少女時代~思春期の5年間をプラハで過ごし、共産主義の国々から来たクラスメイトと学び舎を共にするなど、なかなか普通の人ができない体験を読むことができます。また、小・中学生の万里さんの視点と、大人になってからの視点の変遷も読みごたえがあります。プロのロシア語通訳として活躍し、ロシアの政治界の重鎮の通訳も務めた万里さん。大人になってそういう仕事をしてみて改めて分かった「あの時のアレはそうだったのか」ストーリーは、とてもユニークです。
この本では、ギリシア人のリーシャ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤースナの三人の親友との思い出と消息をたどる旅について綴られています。ルーマニアの政権のことは何も知らなかったし、ユーゴスラビアは何となく内戦がすごいところというイメージしかありませんでしたが、本書からそのあたりの歴史と現状も学ぶことができました。
この三人を訪ねる旅はテレビ企画と連動していて、本書を読んだ後に見たら非常に面白かったです。旧友の顔や、話し方、住んでる場所を映像で見ると、また新たな発見があります。
でもやっぱり本の方が詳細な心の描写がつづられているので、何十倍も深いです。
この本では、ソビエト文化や人柄なども読み取れます。例えば、ソビエト文化では才能のある誰かを妬んだり羨んだりはせず、「才能はみんなのもの」として称賛して楽しむ、という考え方は素敵だと感じました。
こういう世界もあったのか、と視野を広げるきっかけになった本です。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里
妻
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