ミステリー 小説 洋書

1Q84:今まで読んだ春樹本の中で一番面白かった

投稿日:2018年6月24日

【ブックレビュー】1Q84-英語版-村上春樹-idobon.com

私の2015年2月はほとんどこの本に吸い尽くされた

村上春樹のとんでもなく長い小説ということで、手に取ることを躊躇していた本書。
アメリカにいたときに一緒に2週間もロードトリップをした友人が、旅行期間中ずっと熱心にこの本を読んでいたんですよね。そして、ある日こう聞かれたんです。「ユミ、日本語ではabsconedという言葉をよく使うのかい?英語ではあまりに古い単語なんだけれど。」

absconed!ググったら逃走するとか持ち逃げするとかいう意味ならしい。どうやら主人公の天吾の母親かabsconedしたという文脈で使われているとのことだが、日本語版ではなんて書かれているんだろう!「蒸発」とかかな?気になる!

ってことでその時は日本語版が手に入らなかったので、とりあえず英語版を読むことにしました。母国語の小説をあえて英語で読むのは邪道な気がしたけど、読み始めたら止まらなくなってしまいました。私の2015年2月はほとんど1Q84で費やされた(いや、あるいは1Q84に迷い込んだ。笑)。でも、今まで読んだ春樹本の中で一番面白かったです!

孤独について、宗教について、愛について、など色々な問題をカバーしていると思います。3人の主人公それぞれの目線でストーリーが展開していくのも、ハラハラドキドキ。

印象に残ったシーンは、青豆が宗教団体「さきがけ」の教祖の深田を殺しに行くシーンで、彼がこんなことを言っていたところ。

Most people are not looking for provable truths. As you said, truth is often accompanied by intense pain, and almost no one is looking for painful truths. What people need is beautiful, comforting stories that make them feel as if their lives have some meaning. ―人々は厳しい真実なんて探してはいない。真実にはしばしば激しい痛みが伴うから。だから人々は、美しくて心休まるストーリーを探しているんだ。自分たちの人生も何らかの意義があると思わせる何かを。

※日本語版を読んでいないので訳はテキトーです

そうか、だからみんなふわっとしたたとえ話が好きなのか。メディアではしばしば複雑な事実よりも、ぱっと見すごそうなことが取り沙汰されます。私もPRやメディア運営に携わってきたので経験してきたのですが、「そこがポイントじゃないんだけどな〜」ということでも、分かりやすくすごいことばかりが強調される。そうしないと人々が見てくれないから。

そういうところが、深田の言っていることと通じるのかと思います。

天吾が作っていた炒め物、美味しかったよ

余談ですが、天吾が作っていたエビとアスパラとマッシュルームのごま油生姜炒め、描写があまりにも美味しそうだったので何度か作ってみました。これはハマるお味!

そういう発見もあって面白い本でした(笑)。

それからこの本に出てくるヤナーチェクのシンフォニエッタは、読んでいる間ずっとバックグラウンドで聞いていました。小説って音楽やら料理やら言葉やら、新しい発見がたくさんあって楽しいですよね。

ちなみに後で日本語版を確認したら、absconedは「逐電(ちくでん)」と書かれていた…そんな語、日本語でも滅多に使わないですよね。そういう意味で、訳者の方すごいです。


 

【ブックレビュー】1Q84-英語版-村上春樹-idobon.com

1Q84 – Vintage International
Haruki Murakami

Amazonで見る なぜか村上春樹の本って英語版の方がカバーかっちょいいんですよね。

【ブックレビュー】1Q84-村上春樹-idobon.com

1Q84
村上春樹

Amazonで見る 楽天で見る

 

 

The following two tabs change content below.

体や栄養に関するマニアックな本、経済・投資関連の本、社会学系の本が好き。モノを増やしたくないので本はできる限りデジタルにしたいと思っている。ミステリー&サスペンス系の小説が好きだが、はまり込むと家事や仕事をおろそかにするのでたまにの楽しみにしている。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-ミステリー, 小説, 洋書
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

The Bible and National Defense: What the Bible Has to Say About War and the Price of Our Freedom-Bob Yandian-idobon.com

The Bible and National Defense:クリスチャンとして国家の防衛をどう考えるべきか?

聖書と国防を考えるうえで貴重な本 さて、タイトルからして「そんな本誰が読むの?」と言われそうな本ですが、完全に自己満足としてレビューしたいと思います(笑) 聖書を読んだことのない人でも、「右の頬を殴ら …

ベラミ:欲望、死、人生の満足、恋愛のあり方、そしてフランス人の暮らしぶり

最低な男の欲望の末とは… ベラミというニックネームのデュロイはノルマンディーの田舎の出。そんな彼があの手この手を使って出世を目指し、社会的地位をのし上がっていく様子が精力的に描かれた本です。彼の飽くこ …

アルジャーノンに花束を-ダニエル キイス (著), 小尾 芙佐 (翻訳)-idobon.com

アルジャーノンに花束を:知識と知恵の違いを学ばされる

IQ70の人が天才になる話 主人公のチャーリィは32歳なのに幼児なみの知能しかない知的障害者。複雑なことは理解できないですが、パン屋の雑用として働かせてもらっていました。ですが、ある時大学の研究対象に …

王国-中村文則-idobon.com

王国:スリラー、暴力、セックスシーンで飾り立てられた男性優越的な小説

『こんにちは、妻です。読書好きな妻の姉もたまに寄稿してくれることになりました。ところが・・・しょっぱなからかなりお怒りのようです。』 『どうも妻の姉です。よろしくお願いします!この本には怒りすぎて、妹 …

その女アレックス-ピエール・ルメートル (著)、橘明美 (翻訳)-idobon.com

その女アレックス:毎章ごとにこんなにがらっと展開の変わる小説は初めて

完全に普通じゃないミステリー小説 表紙の絵と裏表紙のあらすじからして、女性の誘拐の話かなと思って読み始めました。アレックスという女性は男に誘拐され、想像を絶する残忍な状態で監禁されます。普通のミステリ …