ヤングノベル 小説

ピンクとグレー:スピード感のある物語だが・・・ネタバレ注意

投稿日:2018年6月30日

ピンクとグレー-加藤シゲアキ-idobon.com

ティーネイジャーにはうけるのかも。でも深みに欠ける感はぬぐえない

14歳のおともだちから勧められました。最近読んだ本で、これ面白かったよって。アイドルが書いた本だそうで、読むの気乗りしなかったのですが重い腰上げつつ、ティーンエイジャーの心理を理解しようと務めることにしました。

二人の幼馴染の成長過程、特に芸能界に入ってから仲良かった二人がお互い芸能界で活動するにあたっての嫉妬、取り残された感などの葛藤を描いています。物語全体が映画を見ているような構造になっていて、時間軸やシーンが頻繁に交差します。実際に2016年に映画化されています。

巻末の加藤シゲアキインタビューにもある通り、著者は文章を書くのが好きなんだと思います。何か文章を通して表現したい思いや教訓がある訳ではなく、とにかく達筆さをアピールしたい、というのが彼の意図なんでしょう。アイドルだけど、馬鹿だとは思われたくない、と。確かに、文章は凝ってるかもしれない。物語の構成は一捻りあって、特にエンディングはオチがあるので、スピード感はある。でも、作家として成長するには、達筆さだけでは評価され続けないのではないかと、思いました。

ものの数時間で読んで、消費され、忘れ去られてしまう。そんな数ある小説のひとつです。

何人か自殺するシーンがありますが、そのキャラクター達が、「死」に何を求めたのか、自殺したら現実から離れられると思ったのか、死という行為自体が芸術だと勘違いしたのか、それとも死後の何かを探すために自殺したのか、もっと掘り下げて欲しかったです。

また、白木蓮吾が親友の大貴の芸能界での活躍を手助けする為に自殺する、というのは、死をあまりにも軽々しく扱っていないでしょうか。そんな風に「手助けする」なんて、傲慢では無いでしょうか。その理由を追求し、葛藤し、他の人に伝わる言葉にしてこそ、次のレベルの作家として認知されることも可能でしょう。14歳のおともだちには、講談社青の鳥文庫から出ている少年期用「ああ無情」を読むことをお勧めします。


 

ピンクとグレー-加藤シゲアキ-idobon.com

ピンクとグレー
加藤シゲアキ

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.

妻の姉

歴史小説や古典、社会学系の本など、幅広く読む。ウエディングドレスデザイナーなのでファッション系の本も好き。妹以上にモノを増やしたくない派なので、本は基本的に図書館で借りる。2児の母。時には辛口レビューを書くこともある。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-ヤングノベル, 小説
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

五分後の世界 村上龍

五分後の世界:戦争をやめなかった日本はこうなっていたかもしれない

かなりグロテスクだけど、学ぶべきことがある 目が覚めたら兵士に囲まれて泥沼を歩かされていた主人公の小田桐。謎の地下の空間にもぐりこむが、周りは混血児だらけ。そこは5分時間の進んだ、別の世界だった。第二 …

The-Kite-Runner-Khaled-Hosseini-idobon.com

君のためなら千回でも(The Kite Runner):犠牲、裏切り、悔い改めのストーリー

イスラム教の世界だけどすごく聖書的なストーリーだと思った PR会社で働いていたころ、ある会社の社長のPRをする機会がありました。雑誌やオンラインメディアのインタビュー枠を取ってくる仕事だったのですが、 …

騎士団長殺し 村上 春樹

騎士団長殺し:日常の中に非日常が現れる村井春樹ワールド

お決まりの春樹パターンは健在だけど、相変わらず引き込まれる 「騎士団長殺し」というタイトルからして、最初はバイオレントな歴史ものかなと思っていたのですが、全然違いました。 主人公は、妻に裏切られた孤独 …

王国-中村文則-idobon.com

王国:スリラー、暴力、セックスシーンで飾り立てられた男性優越的な小説

『こんにちは、妻です。読書好きな妻の姉もたまに寄稿してくれることになりました。ところが・・・しょっぱなからかなりお怒りのようです。』 『どうも妻の姉です。よろしくお願いします!この本には怒りすぎて、妹 …

アフターダーク 村上 春樹

アフターダーク:一晩のうちに起こる不思議な出来事を追う

変わったスタイルの小説 村上春樹の小説といえば、ちょっと孤独でパッとしない主人公が、漏れなく不思議な美女とセックスして、その美女がいなくなり…的な展開のものが多いですが、「アフターダーク」はその型には …