外国文学 小説

星の王子さま:失った童心を取り戻せる

投稿日:2018年11月3日

星の王子さま (新潮文庫)-サン=テグジュペリ (著), 河野 万里子 (翻訳)-yumiid.com

イタい大人になっていないか見直す機会に

この本は子供向けの本のイメージが強いかもしれませんが、読むときの自分の状態によって感じ方が変わるので、大人になっても何かの折に何度も読み返したい本です。

結婚を機に渡米することになった時、友達が本書を贈ってくれました。表紙には金箔が施されていて、部屋に飾っても素敵なインテリアになりそうな美しい単行本です。「私の大好きな本なんだ」といって贈ってくれた友人。

当時25歳だった私はこの本を読んでどんな印象を受けたのかは覚えていませんが、30歳になった今、改めて読んでみてまた気付かされることがありました。

王子さまは、大切にメンテナンスしていた自分の星を後にして、色々な星を旅します。そこでは、「変な大人たち」に出会います。威厳がありげだけど実は何も治めていない王様、褒められることだけが生きがいの大物気取り、飲むことを恥じているのに恥じていることを忘れようと酒を飲み続ける酒びたり、指示されたことをやり続けるが自分の頭で考えないランプの点灯人。

「大人って変なの!」と何度も繰り返す王子さま。そんな大人への皮肉な描写から、「ちょっと待って、大人ってここおかしくない?」という視点に気付かされます。

私たち大人が重要と思っているものは、実は「大人」という眼鏡を外してみてみると、そこまで重要じゃなかったりします。本当に大切なことは、わずかです。

30歳になって、家庭を持ち、仕事でも独立している今、私はある意味社会のしがらみから自由な状態です。この本を友人が贈ってくれた25歳の頃より、「本当に大切なこと」が分かるようになったかな、と自分を振り返りました。

この本では「大人たち」を皮肉るシーンが多々見られますが、大人になること自体ではなくて「盲目な大人になること」を揶揄しているのではないかと思います。

夢を見ているような錯覚を得る本

全体的に不思議な雰囲気のストーリーなので、夢を見ているような錯覚に陥るのが特徴です。

サン=テグジュベリ自身は、この本の語り手である「僕」と同じように飛行士で、リビア砂漠に不時着したことがあったようです。ミステリアスで現実には起こり得ないようなことばかり出てくるのに、実話のような錯覚を得られるのは、彼自身が本当にリビアの砂漠で星の王子さまに巡り合っていたからかもしれませんね。

 


 

星の王子さま (新潮文庫)-サン=テグジュペリ (著), 河野 万里子 (翻訳)-yumiid.com

星の王子さま (新潮文庫)
サン=テグジュペリ (著), 河野 万里子 (翻訳)

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.

体や栄養に関するマニアックな本、経済・投資関連の本、社会学系の本が好き。モノを増やしたくないので本はできる限りデジタルにしたいと思っている。ミステリー&サスペンス系の小説が好きだが、はまり込むと家事や仕事をおろそかにするのでたまにの楽しみにしている。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-外国文学, 小説
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

五分後の世界 村上龍

五分後の世界:戦争をやめなかった日本はこうなっていたかもしれない

かなりグロテスクだけど、学ぶべきことがある 目が覚めたら兵士に囲まれて泥沼を歩かされていた主人公の小田桐。謎の地下の空間にもぐりこむが、周りは混血児だらけ。そこは5分時間の進んだ、別の世界だった。第二 …

蠅の王:真のリーダーとは?人間の本質とは?

無人島に残された少年の葛藤から学ぶ もし、飛行機が墜落して、無人島に漂流したら、どうする・・・? 小説の登場人物達の状況は、まさにアメリカのドラマ、「LOST」そのもの。世界大戦の火の手を逃れて疎開先 …

二年間のバカンス-十五少年漂流記 ジュール・ヴェルヌ

二年間のバカンス 十五少年漂流記:小中学生の男の子に読んでもらいたい

明るく、勇気を持つことを教えられ、力付けられる本 「海底二万里」などで有名な19世紀のフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの小説、「二年間のバカンス」を読みました。 15人の少年達が無人島に漂流してし …

The Fault In Our Stars-John Green-idobon.com

The Fault In Our Stars:命のはかなさと青春の短さとアムステルダムの美しさ

ティーネイジャーに戻ったような感覚で 本書は2014年に映画化されていますが、当時ワシントンDCに住んでいて、これでもか!というくらい電車の中でこの本を読んでいる人を見かけまくったので、ついに流行にの …

脂肪のかたまり-モーパッサン-idobon.com

脂肪のかたまり:フランス文学入門に必読。さらりと読める短編

普仏戦争を背景にひとりの娼婦を描いた辛辣で皮肉な物語 以前何件かレビューを書いたバルザックとも匹敵するほど多数の小説を生み出したモーパッサンの処女作。「脂肪のかたまり」はこの短編小説に出てくるフランス …