キリスト教 宗教

プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで:知らなかった宗教改革とその影響

投稿日:2018年8月11日

プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで-深井 智朗-idobon.com

手軽に読めてわかりやすいプロテスタンティズム入門書

ルターの宗教改革というのは、小・中学校の授業でも習うメジャーな出来事ですが、本書はそのあまり知られていない側面や、現代の政治に与える影響などを解説しており、知的な刺激満載の本でした。

個人的には、教改革というと罪を許されるという「免罪符」を販売していた当時のカトリック教会を批判し、「95か条の提題」を示し、プロテスタントという宗派を始めた、というのが大体頭に上る内容でした。

しかし本書を読むと、そのようなステレオタイプの認識からはずいぶん異なる内容が書いてあります。

個人的にヒットしたところをあげますと、

  • ルターはプロテスタントという新しい宗派を始めようとしたわけではなく、あくまでカトリックのリフォームを目指していたこと
  • ルター派の人々は自身を「福音派」と呼称していたかかわらず、カトリック側からの呼び名である「プロテスタント(抵抗するもの)」が定着した。(その理由はぜひ本書をご覧ください(笑))
  • プロテスタントにはさまざまな宗派があるが、大きく分ければ、国家権力や既存の伝統等と結びつきの強い、保守主義的な「古プロテスタンティズム」(ルター派、長老派など)と、それらを批判的なリベラルな「新プロテスタンティズム」(バプテスト、ペンテコステなど)に分けられること 

などでしょうか。また、ルターがヒトラーによって政治利用されていた、というくだりも興味深かったですね。

ただ、日本ではカトリックもプロテスタントも数が少なく、国家とのつながりも薄いので、筆者のいう保守・リベラルの区別はあまりないような気がします。

私自身、プロテスタントのクリスチャンで、長老派の教会に通っています。なので、本書の分類ですと保守的な「古プロテスタンティズム」に入るのでしょうが、あまり保守的な雰囲気はしません。主観ですが(;^ω^) 

なお、本書に何度か言及されている、マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」も読みたくなりますね。

まとめますと、プロテスタントについて知らなかった側面や、興味深いエピソードが色々と載っており、最後まで飽きずに読むことができますので、手に取ってみて損はない本だと思います。


 

プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで-深井 智朗-idobon.com

プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで
深井 智朗

Amazonで見る 楽天で見る
The following two tabs change content below.

国際関係、政治、哲学、古典に関する本が大好物。読書は絶対紙派(電子はちょっと苦手なのです…)。アコースティックギターが趣味で夜な夜な練習にいそしんでいる。ツンツンヘアがトレードマークで、ヘアカットをするときのお決まりの注文は「横と後ろはバリカンでトップは短く」。
▼ブログランキング参加中。クリック応援お願いします♪
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

-キリスト教, 宗教
-


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

日曜日部長は牧師になる-小形真訓-idobon.com

日曜日部長は牧師になる:バブル期を生き抜いたタフなサラリーマン兼牧師

職場でも、教会の奉仕の中でも両方の場で成長と気付きがある 職業としての牧師でなかったからこその発見 積水化成の広報部部長としての仕事をこなしながら、日曜は大阪交野教会牧師としての説教、牧会奉仕を定年ま …

キリスト教と戦争 (中公新書)-石川 明人-idobon.com

キリスト教と戦争:キリスト教はいかに戦争をとらえてきたかがわかる好著

キリスト教は戦争を肯定しているのか、平和主義なのか 私自身クリスチャンであり、また、国際政治や安全保障に興味があります。そんな私の大好きなトピックが合体した、私にとっては1冊で2度おいしい(?)本です …

The Bible and National Defense: What the Bible Has to Say About War and the Price of Our Freedom-Bob Yandian-idobon.com

The Bible and National Defense:クリスチャンとして国家の防衛をどう考えるべきか?

聖書と国防を考えるうえで貴重な本 さて、タイトルからして「そんな本誰が読むの?」と言われそうな本ですが、完全に自己満足としてレビューしたいと思います(笑) 聖書を読んだことのない人でも、「右の頬を殴ら …

In Defence of War-Nigel Biggar-idobon.com

In Defence of War:キリスト教神学者が書いた戦争論の傑作

戦争と平和主義を考えるうえで最高の専門書 色々と本を読んでいて、震えるほど知的興奮に満たされる本に出会えるのは、私の場合せいぜい年に1~2冊くらいです。しかし、2019年は初っ端からきました!今年はい …

The Reason for God: Belief in an age of scepticism-Timothy Keller-idobon.com

The Reason for God: キリスト教とは何か、神様とは何か、その疑問に寄り添ってくれる良書

クリスチャン、ノンクリスチャン両方におススメしたい 私は24歳の時にクリスチャンになりました。それではまったくキリスト教とは無縁の生活を送っていたのですが、大学卒業後にイギリスに留学してクリスチャンの …